第4話:まじなデートの約束。

「いくらだったの?」


「え?」


「だから・・・このイヤリング」


「え〜と・・・その〜300円」


「あはは300円?・・・せめてもう少し・・・まあいいよ」


「ごめん、そんなおもちゃみたいなヤツで・・・いらないよね」

「もらっても嬉しくないよね」


「いいよ・・・喜んでもらっちゃう」

「それと、亜斗夢ちゃんとデートしてあげてもいいかも」


「え?・・・今なんて言った?」


「デートしてあげるって言ったの」

「して欲しんでしょ?デート」


「そうだけど・・・まじで?・・・・え?でもなんで?急に」


「私に高級ブランドなんかプレゼントに持って来ないから」


「持って来ないって・・・て言うか持って来れないだけなんだけど・・・」

「ジャンクショップの店員になんかに高級ブランドは買えないからね」


「私イヤなの、高いモノで人の心を持て遊ぶ人って・・・・

そう言う人に限って釣った魚に餌をやらないタイプって思わない?」


(つうか、俺も金があり余るほど持てったら今頃右欄ちゃんに高級ブランド

プレゼントしてたと思うけど ・・・)


「そ、そうだね・・・僕はそんなこと考えもしてなかった、あはは」


「私は心が籠ってたら300円のイヤリングでも嬉しいの」

「それに、こんな安物のイヤリング持ってきたの亜斗夢ちゃんだけだもん」

「ウケちゃう・・・」

「だから亜斗夢ちゃんとデートしてあげてもいいかなって思って」


「よ、よろしくお願いします」

「あの、あとであれは冗談でした〜なんて言わないよね」


「言いません・・・メイドはウソつかない、ガイノイドはウソつかないだっけ?」


「どっちでもいいよ・・・約束だよ?」


「はいっ、約束ね」


そう言って右欄ちゃんは僕があげた役物の真っ赤なイヤリングを耳に

つけてくれた?


「どう?似合ってる?」


「うん、めっちゃ似合ってる・・・超絶可愛い」


そのとおりだったから他に表現のしようがない。


って、ことでミルクシェイクが休みの時、僕は右欄ちゃんとデートする

ことになった。

百万年口説いてもダメなんじゃないかって思ってたからびっくりした。


予想外の出来事ってやつだな・・・なんでも姑息に計算しちゃいけないんだ。

そこに私利私欲、打算が働くと、きっと相手に見透かされてしまう。

素直に正直にウソ偽りなく正面から接していれば相手はちゃん見ててくれて

誠意でもって答えてくる。


右欄ちゃんはそう言う子なんだ。


たぶんそう言うのを清廉潔白って言うんだろうな。

そんな言葉、僕にはおよそほど遠い言葉なんだけど・・・。


でもひとつ賢くなった。

右欄ちゃんの前では素直で正直でいること。

かっこつけないこと、自然体でいること・・・それだな。


右欄ちゃんとのデートが決まって僕はもう舞い上がりっぱなしだった。

彼女にバイバイしてカフェを出る時、玲ちゃんに声をかけられた。


「なに嬉しそうな顔してるの?亜斗夢」


「右欄ちゃんとデート・・・」


「あ〜誘ったけど断られちゃったか?」


「僕のこの顔見て分かんない?」


「ウソ・・・まじで?」

「百万年口説いても無理だって思ってたけど・・・なにが起こったの?」


「少なくとも右欄ちゃんは俺のことが嫌いじゃないってことだよ」


「まあ、タデ食う虫も好き好きって言うからね」

「せいぜい楽しんで・・・バカやって右欄ちゃんにフラれないようにね」

「あんたドジだから・・・」


まじで玲ちゃんと付き合ったほうがいいんじゃいかって思うくらい玲ちゃんは

亜斗夢のことをよく知っているんだな、これが。

でも、皮肉なことに亜斗夢は玲ちゃんの好みのタイプじゃない。

だからメイドと客の関係以上にはならないんだろうな。


仲が良くても恋人にならない子、仲が良くなくても恋人になる子、そう言う

関係ってあるんだ。


つづく。










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