幼馴染に『好き』と言った時の、私にだけ見せる照れた表情がめっちゃ可愛い
友宮 雲架
1
私――
幼馴染の名前は
黒髪のショートヘアーが可愛くて、ほっぺたはお餅のように柔らかくて、仕草は小動物みたいで。一言で表すなら、可愛い以外言葉が見つからない。
学校にいる時はずっと一菜と一緒。そんな日々が楽しくて、一日が一瞬で終わってしまうのはいつものこと。逆に土日は退屈だった。
そんな彼女は私が『好き』と言うと必ず照れる。今日も例外ではなかった。
――夕焼け色に染まる帰路。別れ際。
「またね、一菜。好きだよ」
「ま、また……ね……バタン」
すると、一菜はいきなり倒れた。どうしたんだろう? 変なこと、言ったかな?
「どうしたの? 大丈夫?」
「こんなの、立ってられないよ」
立ってられない、と言われたので、手を貸すと……。余計に彼女の身体はガクガクと震えだした。
「さ、触……ひゃあああ」
手が触れたことに驚く一菜。
私には気持ちがよく分からない。
「何で立ってられないの?」
「だ、だって……! す、好きって……」
「一菜は私のこと、好きじゃないの?」
「す、好き、だけど……うわああーん」
何故か一菜は猛ダッシュで遠くへ行ってしまった。
?
友達なはずなのに、一菜のことがまだ分からない。ちょっぴり謎多き子だ。
とある日の教室でのこと。
「おはよ、一菜」
「おはよう。十羽」
私は朝、教室に着いてすぐ一菜に話しかける。
ん? なんか今日の一菜、いつもと違うような……。
そして私は、彼女のある変化に気づく。ほんの小さな変化だが私は気づいてしまった。
「一菜、前髪ちょっと切った? めっちゃ可愛いんだけど」
「なっ、なんでそんな事に気づくの!? %○€〆〜〜」
可愛いと言われた事と小さな変化を気づいてくれた嬉しさにより、一菜の思考は掻き乱される。お陰で呂律が回っていない。
そんな興奮状態な一菜に対し、私は至って冷静。
「好きだからに決まってるじゃん」
「す、好き!?!? ちょっとトイレ!」
何でそんなに驚くんだろう……。
待って、って言ったのに猛ダッシュで一菜が去っていくもんだから、追いつけなかった。
***
一菜Side
授業中。
今日は朝から色々あったせいで、わたしは授業どころじゃなかった。
「
笠原というのはわたしの苗字。
ぼーっとしていたが、先生の大きな声により、現実に引き戻される。
わたしは勢いよく立ち上がり、こう叫んだ。
「はい。好きです!」
先生は一瞬目を丸くしていたが――
「そうかい、そうかい。そんなに私の授業が好きだったのか。先生嬉しいよ。当然好きな授業なら、この問題解けるよな?」
「分かりません!」
しーん。
あっ、わたしったら。
十羽に好きって言うはずが、みんなの前で『好き』って言っちゃった……。
それからも授業は終業時間まで続いていく。
十羽に可愛いって言われて、すごく嬉しかった。
毎日、可愛いって言われたい。
十羽に可愛いって言われるなら、毎日髪切ってたい。そのうち、禿げちゃうのかな。でも禿げてもいいや。十羽に可愛いって言われるなら――。
いや、やっぱ禿げは無しね。
***
放課後。
私と一菜はドーナツショップに寄っていた。
いちご味からミント味まで幅広い種類のドーナツが売っていた。
「一菜は何味がいい?」
「……」
やはり一菜は先ほどからぼーっとしている。
「い、一菜!」
「ふえっ! な、なに……?」
「ドーナツ、何味……」
「私ははちみつ味でいいよ」
「おっけー」
ドーナツが運ばれてくるまで、テーブル席で待つ。
「一菜、大丈夫? ちょっと様子がおかしいよ」
「だ、だって、十羽が『可愛い』とか『好き』とか言うから……」
「言わないほうがよかった?」
「ううん。言ってほしい」
「じゃあ、これからも――」
「――大変お待たせしました。いちごドーナツとハニードーナツ、それからホットコーヒーです」
店員さんが甘い匂いを連れて、席までやってきた。
「来ちゃったね、食べよっか」
「……うん」
それから暫く、無言でドーナツを食べる。
話す話題が無いというか、ただひたすら気まずかった。
ドーナツを食べ終わり、店員さんに下げてもらう。
「今日は大好きな一菜と美味しいドーナツが食べられて、幸せだった」
「うん、わたしも。……って……、大好きっ!?!?」
いきなり両手で顔を覆い、足をバタバタさせる一菜。
顔は林檎のように赤くなり、心拍数は急上昇。
「どうしたの! 一菜」
「……」
「って、顔赤いけど、熱でもあるんじゃないの?」
「熱は無いと思う。全部十羽のせい」
「ごめんね! ドーナツ不味かったよね!」
「ドーナツは不味くないよ」
錯乱状態の一菜を連れ、店の外へ。
もう夕陽は沈み、薄暗かった。
しばらく無言だったが、唐突に一菜は言った。
「十羽と二人きりになりたい」
「二人きり? そうだなー、じゃあトイレにでも行く?」
多分、ショッピングセンターのトイレになら、もうこんな時間だし、人は少ないはず。ワンチャン二人きりになれるかもしれない。
「トイレは嫌」
「そっか。じゃあ、ちょっと歩くけど橋に行こう」
コクリ、と一菜は頷き、再び歩き出す。
――そして、橋に辿り着く。
夕暮れ時の川は月に照らされ、光り輝いていた。
「やっと二人きりだね」
「うん……それで話があるんだけど」
「なに?」
「わたし、十羽が好き」
「私も一菜が好きだよ」
だが、一菜は首を左右に振る。
「そうじゃなくて。わたしの好きは特別な感情というか……」
「それって……」
「うん。恋愛対象として好き。だから、十羽に好きって言われる度にドキドキしてたの」
「そうだったんだ。それなら、考える時間をちょうだい」
「うん。分かった。そしたら、返事は明日にでも……」
不安そうに俯きながら、手を振って私から離れていく一菜。
その後ろ姿を見て思った。
私は一菜を追いかけたいって。
もしかしたら、一菜と付き合えたら、今まで以上に幸せになれるかもしれないって。
「考える時間はそんなに要らなかった」
「!」
気づけば私は一菜のすぐ後ろまで来ていた。無意識のうちに彼女を抱きしめていた。
小さくて温かな背中に触れる。
私がこの子を守ってあげたい。そんな気持ちが芽生える。
だから、私は彼女に告げる。
「――好きだよ」って。
幼馴染に『好き』と言った時の、私にだけ見せる照れた表情がめっちゃ可愛い 友宮 雲架 @sss_469m
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