番外編 僅かな希望の光 2 ~ヒナル視点~

………。

……。

…。

 

 ここに来てからあっという間に時間が経ったような気がした。私は、お気に入りだったピンクのパーカーをゆっくり脱ぐ。


「お気に入りだったのになぁ…」


 あっちこっち破かれたパーカーを見て…私は余計にいじめてきた連中に腹をたてる。思ってはいけない事だけど、私はあいつらが死んでほしいと何度も思った事は言うまでもない。


「自業自得だよ…、あいつら、本当にざまあみろって…」


 親が交通事故で亡くなってから、弟と私は親戚の家で暮らすことになった。しばらく落ち込んでいて友達すらもできないような暗い日々を過ごしていた…。

 親戚からもいい思いをされてなかった。むしろ酷い扱いだった。元々、親と親戚は仲がいいわけでなかった…。向こうは、しゃあないからといった感じで引き取ったみたいだ。


(こっちの世界の方が暖かい… あんな辛いところになんか帰りたくない…)


 私はふかふかな良い香りのするベッドに横になる。親戚の家の布団よりも暖かく感じる。最初はここが、どこかの外国かと思ったけど違うみたい…。まるで漫画の世界…。私の弟がやってた「シーブリビオン」っていうゲームの世界に来ているみたい…。

 

(あのゲームにも、ウルフがいて剣とか弓で戦っていたから…)

 今日は嫌いな死んでほしいと思っていたいじめに加担したアイツが死んでくれた…。ルイスさん…、お兄さんは私から見たら白馬に乗った王子様に見えた。


 私は、そんな事を考えながら再び起き上がる。机には美味しそうなスープとおにぎりが2個用意されていた。


(あっ、美味しい…)


 サラさんが合間に作ってくれたスープを口にする。パセリとパンのほのかな味がするコーンスープだ。少し濃厚で飽きのこない味だ。


(おにぎりも作ってくれて感謝感謝…)


 私は両手を合わせて、一礼をしながら、おにぎりを頬張る。塩加減がよく、私の口のサイズに合わして作ってくれたおにぎりだ。中は何も入ってないけど、塩加減が良く、どんどん進む。


「ごちそうさまでした…」


 私は横になり、目を閉じる…。


 (いじめてくるアイツらも、一緒に来た日本人だと伝えなければ…) 

 

 でも、このまま盗賊にしちゃえば…、アイツら終われる身になるんじゃない?そんな普段思ってはいけない事が脳裏にぐるぐる回る。まるで天使と悪魔の私が私に問いかける。


(いっそ、私のあの不思議な力でやっつけちゃおうかな?)


 なんて、思ったりもした…。


(でもあの力はなんだったんだろう…)


 お兄さんが庇ってくれた時にぎゅっとしてくれた時、それからすぐだった。お腹の上辺りと頭の奥の方でモヤモヤとした時に、思い浮かんだ見た事のない文字…。その時、一瞬、光の槍が頭の中で浮かんだと同時に、さっきの文字が頭の中で光った。その時何かができる気がした。そしたら現実に頭の中でイメージした光の槍が手から飛び出した…。


(あれは、本当になんなんだろう…)


 でも、もしも私だけでなく、逃げ出したいじめてきたヤツラも不思議な力が使えたらきっと仕返しに来るだろう…。


(ワガママかもしれないけど…、お兄さんの側にいた方が安全なのかな…?)


 お兄さんを利用するようで心苦しいけど…。


(それにお兄さん…、なんか初めて会うのに、どこか優しかったから…)


 親を亡くしてから人を拒絶して人を中々信じれなかった私だけど…。お兄さんが側にいると、何故か安心できた…。ただ、それだけだ。


(明日から… どうしよっか…)


 そんな考え事をしていたら、だんだんと睡魔が襲ってくる。深い深い闇の中…、私は落ちていく…。でも…少しか…気持ちの良い闇だった…。かすかな光が私を照らす…。そんな…闇……だっ…た。


………。

……。

…。

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