第1話 追放された理由…。
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『お前はクビだ!クビ!』
「ふぅ~、なんとかなったから助かったものさ…」
俺は、椅子にもたれかかりながら目の前の女性と話す。
「ルイスさんも災難でしたね…」
「まぁ、なっちゃったもんは仕方ないさ… サラさんにも迷惑かけるよ」
俺と会話してくれているギルド受付のサラと今後について話している所だった。背は子供?!というくらい低く、耳は尖った耳をしている。ハイエルフという種族だ。
「それにしてもヒドイですね。まさかの勇者パーティーによる置き去り!」
サラはやれやれといった仕草を見せながらため息をつく。
「仕方ないさ… 俺がスキル使えてないからみたいだし…」
この世界の人は誰しも神々からジョブを与えられる。しかし、俺はジョブも分からなければスキルも使えない。いや、使えないというよりは…。何故か鍵がついた扉の如く開閉できないのであった。
「ルイスさんのジョブ適正は間違いなく☆6なんですけどね…、ただなんのジョブなのか…」
「それさえ分かれば苦労しないんだけどなぁ…」
今日、俺は勇者パーティーをクビになった。2年間、一緒に魔王討伐の為に旅を出て、久々に戻ってきたこの故郷で俺は、仲間達からパーティーを追放された。近場のダンジョンにホブゴブリンの群が大量に発生して、勇者パーティーは逃げるようにして俺を追放宣告をしてきた。俺は一人置き去りにされてきたというわけだ…。
勇者、アレックス。金髪色をした俗にいうイケメン。顔は中性的で身長は180くらい。白肌で顔は整っていて目はブルー色。女性からも人気らしい。そして彼は、日本という異世界から来た人らしい。その異世界から来た人の事を俺達、ナノの世界では『迷人』とよんでいる。
「異世界からの勇者ねぇ…」
サラは受付台帳を整理しながらふぅ~と話す。サラはしらばらくしてから受付台帳を片付けて…
「異世界から来た人は勇者のジョブを女神から授かり、一番強いスキルや力が授かるって聞くけど…」
「らしいね…。ただこの数年で異世界から迷人が何人か来ているっていう話だから、アレックス以外にも強いジョブを授かる人も現れてもおかしくないはずだけど?」
「ルイスさんは知らなかったっけ?」
「え?」
「迷人で勇者のジョブを与えられる人は今までで一人だけ。二人はまず存在したことがないの」
それは知らなかった。迷人の誰かが必ず勇者等という上級者のスキルが与えられると思っていたからだ。
「じゃあ、アレックス以外に勇者が存在する事はないんだ?」
「そういうこと~!」
「そういえば幼馴染み達もアレックスと一緒に?」
「ああ、幼馴染み達もアレックスと… でも、クリステルが魔王を倒したら戻ってくるから一緒に暮らそう言ってくれたからさ…。それ…シューやエアロも本当は…」
俺はニヤけながら答えてしまう。クビになったばかりなのに何を言ってるんだか…。それだけ彼女達に対しての影響は強い。
他のメンバー…。俺とアレックス以外に、シーフのジョブを持つ シュー。魔術師のジョブを持つ エアロ。聖女のジョブを持つ クリステル。 全員女の子で俺の幼馴染みだ。
クリステルは俺と同じ年だけどお姉さんみたいな存在。シューとエアロは双子の姉妹で俺より2つ下の妹みたいな子達。
俺のクビには反対すらもなく、むしろ喜びながら賛成していた…。あれには引っ掛かる…。昔は凄く仲良かったけど…。最近やけに冷たい。昔はクリステル達は『ルイス君のお嫁さんになる!』なんて言っていたし、満更じゃないが、俺も本気にしていた。だから告白は嬉しかった。。。
「だけど…、今日の三人は特に何か雰囲気がおかしかった…。」
「どうかされました?」
サラは目をくりくりさせながら不思議そうに俺を見ていた。
「いや、なんでもないよ」
………。
……。
…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんなやり取りや世間話をしていると、辺りはこがね色の空模様に変わり始めてきた。鳥達の囀ずりも聞こえなくなってきて、夜が訪れようとしている。
そろそろ帰るとするか…。
「じゃあ、何かあったらまた寄ってね~」
「ああ、でも、しばらくは休暇を楽しむとするさ!」
ギルドを出て、とりあえず久しぶりに我が家に向かう。この街は少し大きく、端から端まででも徒歩だと40分以上はかかる。
(とりあえず~、裏道から帰るか…。あんまり通りたくないけど…)
裏道から帰れば10分以上は短縮できる。でも問題がある…。一旦、街の正門から出て裏門を通り抜けるわけだが、モンスターもいないわけではない。生憎、街は大きな壁で囲まれているし、衛兵も守ってくれている。ただ、外に出れば話は別だ。
(最近、モンスターも増えているからな…)
ここ近年、モンスターが大量に発生している。しかも、見た事も発見すらもされていない未知のモンスターだ。魔王が現れてから特にひどさを増す…。
「さぁて…、明日からなにすっかなぁ~…」
久々の休暇に少しばかりか胸を踊らせる。何せやりたい事が沢山だ。いや…、やらなければいけない事があるのだが、とりあえずは少し休みたい…。正直な話、クビの宣告を受けて少し落ち込んでいるのは事実だ。
(んっ…?誰かいるのか?)
半分くらい歩いたとこだと思う。森の中から男と女数名の声が聞こえる。普通の会話には聞こえない…。俺はモンスターに襲われていると思い近づいてみた…。段々と話声が聞こえてくる…。
「んっ…! うっ!!はぁ…」
「く、クリステルっ…、今日はなかなかいい感じだよ!」
「ゆ、勇者様…、あ、あいして…ますわ!!んっ!」
男がその女性と話をしている…。よく聞きなれた声だ…。その呼ばれた名前もよく知っている…。その声は快楽に溢れてしまっている声だ…。
(クリステルっ!?)
辺りは大分暗くなってきている…。うっすらとしたコバルトブルーの模様の中にある風景を夕日が、彼らを…、照らしていく…。
(…ツっ!!)
やっぱり勇者アレックスだ…。そして、クリステル…。シューとエアロもいた!!彼らは下半身に何も着けずある行為に及んでいた…。
(そ、そういう事だったのかよ…)
俺は動揺してしまっている。心臓がバクバクと音をたてている…。今まででいえばモンスターとの戦いで緊張した時以上だ…。そういう狙いでも追放された訳だ…。
(なんで…、彼女達は…。俺はそういう意味でも捨てられたのか…。アレックスっ…!なんでだよ!!)
ばきっ!
そんな時、俺は動揺してしまい木の枝を踏んでしまった…。
(くそっ!! しまった!見つかってしまう!)
「んっ! 誰だ!?僕の楽しみの邪魔するやつは!」
「勇者様…。もしかしたらルイスだったりして?」
「あはは!ウケる!なに?!ルイスの兄貴がのぞき~?きも~」
「勇者さまぁ。そろそろあたしにも…。クリステル姉さんばかり… ズルいですっ!」
後ろの方で三人の笑い声がする。それからすぐ今度はエアロがアレックスの上にまたがっているのが確認できる …。
俺は咄嗟に、近くにあった人工的に作られた穴に飛び込んだ…。何を考えたらいいのか分からない…。幼馴染みまでにも裏切られ自暴自棄に陥っていた…。
………。
……。
…。
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