追放された…けど!この世で大切なお前達がいるから俺は旅に出る! ~大切な"家族"と"仲間"と一緒にざまぁしますね~

ねればる

無能とパーティーからも恋人からも捨てられた男

第0話 追放される者。追放する者。


 「早くきてくれよ~!兄貴!遅いよ~」


 「お兄様~!遅いですぅ~」


 ホブゴブリン討伐で、とある山の頂まで歩いて来ている俺達…。そんな中、二人の少女が俺を呼ぶ。二人とも俺の幼馴染みで、一人は金髪でショートカットが似合うボーイッシュな感じの女の子。もう一人はツインテールが似合う女の子だ。二人とも背丈も変わらず、顔も似ている。性格と髪型が同じなら見分けがつかないほどだ。


 「ほら…。ルイス?早くしないと追い付けませんわよ。シューとエアロ?先に行っていて宜しいですわ…」


 俺を呼ぶもう一人の女性。幼馴染みの一人で王国より選ばれた聖女で金髪のロングヘアーで俺よりも年上でどこか物腰柔らかく、包容力のある慈愛に溢れた大人の女性だ。そして俺の婚約者の一人でもある。


 「分かった…。でもな?これだけの荷物持っていたら…、流石に…」


 「兄貴~…そんな情けない事言っていたら、また勇者様に言われちゃうぞ!」


 勇者様…。アレックス。こいつが来る前までは、彼女達とは毎日のように楽しく過ごせていた。あいつが来てからというもの、俺がジョブが分からずスキルすらも使えないと罵倒したり散々な目にあってきている…。あろうことか、ここ最近は3人とも何故かアレックスにベタ惚れしている最悪な状態だ。


 「おいおい!荷物持ち!遅いよ!それだけしか取り柄がないんだから、それくらいしっかりやってくれないと困るよ!」


 そう言ってくるのがアレックス。こいつはエルドアス王国から魔王を討伐するために派遣されてきた勇者だ。だから彼の言う事は絶対でもある。何せ、世界の危機を防ぐと言われてきた伝説のジョブを持つ男だからだ。


 「勇者様~っ。お兄様なんてほっておいて行きましょう?」


 「本当だよ!ルイスに合わしていたら日が暮れちまうぜ!それにさ~?」


 「ふふふ!シュー?今はまだいけませんわ。ルイスが居るんですから!」


 「あっ!そうだったな!ははは!」


 「えっ?どういう意味?」


 「なんでもありませんわ。ルイスが気にする事でありません…」


 この3人は何かを隠しているようにも見えるが…。今は取り敢えず、そんなくだらない事で悩ませている時ではない。


 「アレックス様?さぁ、行きましょう?」


 俺の恋人であるはずのクリステルはアレックスの腕にしがみつき腕を組み出す。クリステルの表情はどこか恋い焦がれる乙女のような表情でアレックスをじっと見つめている。


 (くそっ…。どうしてなんだよ…)


 「荷物持ちのルイス。早く上がってきてくれないか!!本当に君はノロマだな!」


 (何とでも言いやがれ…)


 やがて、双子姉妹のシューもエアロも勇者アレックスと一緒に手を繋いだりとイチャイチャしている姿を見せつけてくる。何がどうなってるのか本当にわからない…。




………。

……。

…。




 やがて、山頂にある洞窟が見えてきた。勇者アレックスやクリステル達は既に洞窟に入ったようだった。俺はといえば、彼らが戻るまで装備や食事の管理などをしている。彼らがいつ戻ってきても良いように管理をしている。俺にはそれくらいしか出来る事がないから仕方ない。それから、暫くまっていた。


 (あいつら、いつ出てくるのか…)


 やがて、更に待つと彼らが出てくる。それなりに苦戦したのだろうか、アレックスやクリステル達の服装が少し汚れていたり乱れている事に気付く。



 「お疲れ様。服が汚れたりしてるけど何ともなかったか?」


 「有るわけないだろ!僕は勇者だぞ?お前とは違うんだよ!」


 「そうだぜ!兄貴!心配なんかするなって~」


 「わ、私は少し…、休みたいです…。へとへとですぅ~…」


 エアロだけ顔を赤くして息を切らしているように見えた。


 「エアロ?大丈夫?薬草あるから使うといいよ?」


 俺はバッグから煎じた薬草を取り出してエアロに渡そうとするが…。


 「そんな余計な事しないでくれっ!!」


 エアロに渡そうとした手に持った薬草をアレックスは凪払うかのように俺の手の平を剣のボンメル部分で叩かれてしまい、煎じた薬草を地面に落としてしまう。


 「お、おい!」


 「クリステルが回復魔法が使ってくれてるんだから大丈夫に決まってるだろ?いちいち余計な事をして僕の邪魔をしないでくれないか!?」


 俺がアレックスに文句を言うのも束の間、横からクリステルが割り込みだし、俺とアレックスの間に入ってくる…。


 「えぇ、つい先ほども私がエアロに回復魔法を使ったから大丈夫ですわ。あまりアレックス様を困らせないであげてほしいですわ…」


 「は、はい!お兄様が心配する必要はありませんっ!大丈夫なので!」


 しかし、見るからにエアロは足がガクガクと震えていて顔が赤く火照っているようにも見えた。前までなら、少しの異変でさえエアロは俺に「私、大丈夫でしょうか?」と聞いて来てただけに異変の変化に疑問を感じていた。


 「役にもたたない上に、僕達に対して反発もするんだからどうしょうもないクズだな…」


 「本当ですぅ…。こんな人に心配されるなんてもう嫌です…。何かあれば勇者様に言いますので!」


 なんなんだよ。どいつもこいつも…。


 そう思った矢先だった…。勇者が攻略したであろう洞窟から人ではない、聞いたこともない雄叫びが小玉してくる。


 「あれは、ホブゴブリンか!まだ、生きていたか…」


 「どうしましょうか。アレックスはもうスキルは使えないのでしょう?」


 よく見れば緑色や茶色のような色をした小さい姿のゴブリンが5体とそれに紛れて、成人男性よりも一回り体格が良いゴブリンも1体目撃した。ゴブリンだけならまだしも、ホブゴブリンは冒険者が束になって勝てる相手だ…。その力はオーガにも匹敵する。


 「ぞろぞろ出てくるね…。どうする?勇者様!?」


 「う~ん…。そうだ!」


 勇者アレックスは俺の方を見るなり、何かを閃いたようにこちらを見てきた。


 「ルイス。今日でお前を追放する。この場を持ってさようならだ!」


 「はっ?」


 この状況でこいつは何を言っているんだ?!


 「お前はクビだ!クビ!」


 「お、おい!?」


 「それいいね!!ルイスの兄貴が劣りになってくれるならボクたちも逃げれるしね!」


 「お兄様…。私たちの為にここで劣りになっていてください…」


 「そういう事ですわ…。残念ですがここでお別れです…」


 「お前達もかよ!?」


 3人がそれぞれ、そう言うと…、エアロは目を閉じて俺の方へと杖を向けて魔法を詠唱する。やがてエアロの体から白色のオーラーが放たれると、俺は重力に耐えられずに立っていられる状態でなくなる…。


 「ぐっ!?な、何をするんだよ!」


 「まぁ、恨まないでくれたまえ。この僕に貢献できたんだから…」


 「お、おい!ふざけるなよ!!冗談も大概にしてくれないか!?くっ…!!」


 「ルイスの事は忘れませんわ…。結婚の約束をした事も!」


 そんな中でもゆっくりとゴブリン達の群がぞろぞろと一斉に近付いてきている…。


 「じゃあね~!兄貴!もし無事だったらその時はその時で!」


 「お兄様!ごめんなさい!私は勇者様と一緒がいいんですぅ!」


 やがて3人は走りだし森の入り口の方へと山を降りてくる…。ゴブリンの集団も間近に迫ってきている…。段々と1歩1歩と…。


 「くそっ…!!重力だけでもなんとかなるならっ!」


 立とうとするも、まだ重力魔法は切れる事なく俺を立たせようとしてくれない…。


 「ここで終わりたくねぇよ…」

 「おい!大丈夫かっ!?」


 そんな時だった、洞窟の反対側から数名の冒険者が姿を表し、俺の方へと駆け寄ってきた…。


 「た、助かった…。俺は重力の魔法をかけられていて立つことができません…。手を借りてもいいですか?」


 「何があったか分からんが、アンタはここで休んでてくれ。お前らっ!先ずはあのゴブリンを蹴散らすぞっ!」 


 「オッケー!!」


 通りすがりの冒険者は、一斉にゴブリンをばたばたと剣や魔法で軽々しく倒していく。その光景を見ながらも、俺は唇を噛み締める。噛んだ唇が傷つきじわりと血の滲む味がしてくる。


 (俺にもああいう力があれば…。どうしてなんだよ…)


 あのホブゴブリンもなんとか数人がかりで蹴散らすのもあっという間の出来事だった…。冒険者達がゴブリンの集団を倒し終わるとともに俺にかけられていた重力魔法も消えて、普通に動けるようになった。冒険者達と一緒に俺が住む街…、メルドアへと向かうのだった…。悔しさと悲しさと情けなさの中、ただ心が苦しかった。そして、勇者アレックスから言われた言葉が深く突き刺さっていた…。


 『お前はクビだ!クビ!』


 この言葉が深く突き刺さった。途方にくれながらも俺はメルドアのギルドへと向かうのだった…。

 

 





 後書き…

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こちらの0話は後から付け加えた物になります。1話が若干、内容が薄い感じの為、よりよく感情移入しやすいようにと足しました。


 尚、1話についても若干だけ内容を変更させていただきました。

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