第2話 色々と不運な男…

「うわっ!?」


 穴に入った俺はうっかりと足を滑らせた。下り坂になっているみたいでそのまま滑って落ちていく…。


「…っと、なんともないみたいだな… …にしても厄日かよ…」


 3mくらいの穴に落ちてしまったみたいだ。あんな光景を見せられてしまい、挙げ句の果てには穴から滑って落ちた…、なんて考えるだけで具合悪くなる…。


「それにしてもなんでなんだよ…」


 クリステル達がアレックスに腰を振る様を見せつけられた挙げ句、俺に対しひどいような事を言っていた…。あの幸せそうな3人の顔をみるだけでも吐き気がする。寝取られたにしても最悪な寝取られ方だ。


(もう、何を信用したらいいんだよ…。)


 俺は意識朦朧とふらふらしながら、上に上がる道を探す。穴から落ちた底は、洞窟ではなく外みたいだった。多分、街の周りの崖下だと思う。辺りは大分薄暗くなり、暗闇になるのも時間の問題だった…。


 そんな矢先…。


「なっ、なんだ!?」


 地面が大きく揺れる!木々がざわざわと音を立てて揺れる!その後直ぐに雷みたいな閃光が音もなく落ちたのだった…。



………。

……。

…。



 しばらく歩くと、緩い坂道に出た。まっすぐ上を見ると街の灯台の灯りが見える。おそらく監視塔だろう。辺りは暗いため注意しながら恐る恐る足を進めて行く。


(んっ?光?)


 少し歩くと向こうの奥で 見たことない光が見える。松明でもライトボール(魔法)でもない…。変わった光だ。ライトボールくらい真っ白い色で、いくつか確認できる。ただし、それほど大きな光ではない…。周囲をやっと照らせれるくらいかの光だ。


(誰かいるのか?)


 男女の怒声みたいな声と、少女の悲鳴らしき声が聞こえてくる。まれに盗賊どもが街の近辺で略奪したりしている。もちろん討伐対象だ。俺はゆっくりと近づき状況を見る。


「はやく脱げよ!ぼこられたくねーんだろ!」

「きゃはは!!みっともなーい!」

「写メ撮ったら拡散してあげよーか?マジ、人気でるよー!」


 写メ?意味の分からない言葉を話しているが一人の少女を寄ってたかって暴行を加えようとしている。


「もう止めてよ!私、何もしてないじゃん!何で毎日こんな事されないといけないの!?意味わかんないじゃん!!」

「態度がムカつくからにきまってんだろーがよ!」


 一人の男がそういうと少女の髪を掴み頬を叩く。

ぱん!っと乾いたような音が響く。


「くっ!!いたい!!」


 少女は泣きながら抵抗しようとするが男の力には敵わないみたいだ。


 姿を見るからに暴行されている少女を含めると6人の姿が見える。男は一人は金色の髪をして短髪。もう2人の髪は白っぽい色だ。暴行されていない少女は2人、それぞれ茶色のような色に見えるが暗くてよく見えない。一方、暴行されている少女の髪は黒色…。


「俺と…、同じ色…。」


この世界では大抵が金色や茶色が当たり前だった。俺みたいに黒は珍しいものがあった…。服装はというと男女ともに上は貴族の執事が着ているワイシャツ。ネクタイもつけている。ただし、貴族みたいにきちっとした服装でなくだらしなくみえる。下の服装は緑のチェック柄の色。


「緑の色…?緑骨団か?」


 この近辺に集団で活動をしている盗賊達も緑を基準とした服装の盗賊だったからそう思った。


「おら!早く脱げって!こんなとこに連れてきた罰だ!」

「あんたのせいでワケわからない所にいるんだからね!責任とれよ!」

 

 男は、少女のワイシャツに手をかけ無理やり破ろうとする。


(見てられない!)


 俺は、今日の色々な出来事で少し頭に血がのぼっていたのだった…。俺は前に出る。レベルはそれなりに高いから一般の人よりは素早く動ける…。

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