【閑話】子の名前は
この子が私の子供だと言うことは誰が見ても明白で、姿形がもう、なんというか…小さい私なのだ。
髪の色はヴェルに似たらしく銀髪、瞳の色は淡い茶色で多分私に似ている。透き通る真珠肌というやつである。
(真珠肌ってなんだ?白くて薄ら輝いている…そういった感じ)
…この世界基準の美少女に、周りの人は皆口をあんぐりと開けっ放しだった。
私は皆とは違って『初めての授乳は?あれ?もうおっぱいとかいらない系?え?』だとか『あれ?夜泣き…するのかな?しない?』など、混乱しすぎてそんな事を考えていた。
三時間ごとの授乳の寝不足を経験しながら『大変だけど可愛いから許せる~』とかニマニマしながら言うあの妄想は、本当に妄想で終わってしまった。
まぁ、授乳も夜泣きもその時考えることでは絶対なかったと今なら思う。
ミミちゃんがバスタオルを子に巻いてくれている間に、他のメイドが来客用に用意してある子供用簡易ドレスを持って来てくれたので、その服を着せたのだがまんまミニサイズの私だった。
『っ我が子が1番可愛い!』と、親バカを炸裂してる私だったが、今はそんなことを言っている場合でもなかった。
「ちょっと…前例がなさすぎて私じゃどうこう言えないし…判断が出来ないわ。トリン、悪いけどあんたちょっと王様にこのことを急ぎ報告してきてちょうだい」
「え、えっと。はい、わ、わかりました!」
そう言って部屋を出ていくトリンを皆が目線だけで見送った後、各々顔を見合わせたのだった。
さてどうするかと思ったのも束の間、このお腹が『キュゥン…』と小動物のように鳴き声をあげた。
それを聞いたミミちゃんは食事の用意をしてきますと言って部屋から出ていった。
私はソファーに座り、子はその隣に腰掛け私の膝にゴロリと寝転んでいる状態のままで私たちは話をする。
「どうすれば良いのかしらね」
「んー…とりあえず…命名?」
「めーめー?」
私の言葉にキョトンとした顔をする子。可愛い、可愛すぎる。
「あなたのお名前よ」
「なまえ?」
「そう、真珠(しんじゅ)って言うのだけれどどう?」
「しんじゅ!えへへ!」
私が真珠という名を伝えると、それを聞いた真珠は嬉しそうに目を細めてえへへと笑う。
私が夫達と名前を決めるとき『どんな名前にしよう?』と言った私に対し『よければ優里様の世界の名前とかで良いのはあったり?』とヴェルが聞いてきたのだ。
それに対して私はこの世界でも出来るだけ浮かないような名前の候補をいくつか出し、皆にそれがどんなものの名前かを説明し、最終的に真珠と決めたのだ。
銀色の髪の毛に白い肌の真珠にはこの名前がとてもよく似合っている。真珠を見つめながら私は『この名前にしてよかったなぁ』と思った。
私と真珠が話していると、周りにいる皆は私たちを眺めひそひそと会話をする。
何を話しているんだと聞き耳を立てると『これは誘拐されますよ』『んなことは見ればわかるっすけど…』『ちょっと、あんた達夫が守るしかないでしょ』『俺、見回り得意だし見回るよー』『僕も可能な限り…』『警備増やした方が…』と『この世界で美しすぎる真珠をどうやって守っていくのか』といった話し合いをコソコソとしていた。
それを聞いた私は『これからが大変だろうなぁ』と、独りごちたのだった。
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顔だけ美醜逆転の世界で聖女と呼ばれる私 猫崎ルナ @honohono07
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