れっつ、王様げぇーむ!





「なんか楽しいことがしたい。あー、楽しいことがしたい…。…。…。あ、そうだ!みみちゃん!細い棒を7本用意してちょうだい!」


「は、ははははいっ!」




唐突な私の暇だコールを皆は微笑ましげな表情で見ていたのだが、私が細い棒を持ってこいと言ったことで『何が始まる?』『異世界の遊び?』と興味津々。


私はミミちゃんが用意してくれた棒の先に1~6の数字を書き、一本だけ棒の先に数字では無く赤い色をつけた。


それを見えないように何の筒か分からない、部屋の隅に置いてあった筒の中に入れ、私は皆に言った。




「はい!始まりましたー聖女の暇つぶし企画!お、う、さ、ま、げ、ぇ、む!」


「あんたその遊びの名前、聖女だから許されることよ…あとその棒入れてるやつ、凄く高いものだから気を付けなさいね」


「王様ゲーム?なになに?俺楽しいことならするー!」




私の周りに近づいてきたレイ・ヴェル・ティル・リュカ・ミミちゃん、それにレイに呼ばれて来ていたいたトリンが私を見てキョトンとしている。


トリンはレイに呼ばれて部屋にいたので、私がちゃんと捕まえて強制参加させた。


王様ゲームは人が多いのが楽しいのだ!…多分っ!




「ルールは簡単!みんなで一本の棒を引く、赤い色の棒が王様!王様は1~6の数字の中から好きな数字を選び『一番と二番がキスをする』などの命令をするのです!あ、数字は自分以外に見られないようにしてね!」




私がそう説明すると、皆が皆ギョッとして私を見てきた。




「つまりそれは、僕とこの猿がキスをする可能性も出てくるという…?」


「おい!んなこと考えんなよレイ!あと俺は猿じゃねぇ!そもそも最近してねぇよ!」


「あんたはよくそれをこのメンバーでやろうとか思ったわよね…」


「楽しそーじゃん!俺、王様やりたぁーい!」


「あ、あのっ!私も、も、も、もしかしたら優里様と…?!きゃぁっ」


「えっと…。え?え?これ僕も?え?え?え?」


「よーし!みんな棒を一本ずつ指で掴んでくださぁーい!せーのっ!」



「王様だーれだ!」


「いや、あんた…凄い独裁者よ今、まぁいいけどね。私が王様よ、じゃぁどうしようかしら?3が6に愛を囁くってどうかしら?」


「あ、俺3番っす」


「…猿が僕に愛を囁く?」




3番はヴェルで6番はレイだった。


ヴェルはレイの前に跪き、


『レイが俺のことを猿だと何度言い蔑もうが、俺はレイの事を…よき第1夫として尊敬してるんす。同じ夫としてレイのことを俺は愛してる!』


と言い、それを聞いたレイはなぜか頬を赤らめながら


『よき第1夫…尊敬…ありがとう…』と予想に反して喜んでいた。


それを見ていたティルは床を転がりながら大笑いしてたし、みみちゃんは頬を蒸気させながら『さすが優里様の夫様です』と言い、トリンは『ぼ、僕は何を見せられてるの?え?え?』と言っていた。




「はいはーい!ここ戻してー!ふりふり~ふりふり~よし!みんなつかんでー?行くよー?せーの、王様だーれだ!」


「あ、あ!私です!どうしよう…では、では…1番の方が5番の方に…うふっ、後ろから抱きしめてもらう、です!」


「あ、5は私ね」


「わーい!リュカに抱きしめてもらうのはわったしー!」




5番はリュカで1番は私だった。


私は楽しくて楽しくてニッコニコで立ち上がる、その後ろにリュカがきて私のことを優しく抱きしめてくれた。


リュカの花のような優しい香りと、私よりも背が高く髪が長いので抱きしめられるとリュカの絹糸のような髪の毛が私の頬にあたる。


自分で始めたくせに恥ずかしくてなんか…凄くドキドキしてしまった。…多分今の私の顔は真っ赤だろう。


私のその顔を見たレイは『優里様は恥ずかしがり屋ですね…そんなところも大好きです!』となぜか喜んでいたし


ヴェルは『俺も優里様に愛を囁きたかったす…』と遠い目をしていて、ティルは『俺の番はい、つ、か、なぁー!』と楽しそうにしてるし


みみちゃんは『あぁ、優里様…かわいい、かわいいです。素敵です…』と恍惚の表情で私を見ていて


トリンは『え?え?聖女様…美しいのにか、かわっ…かわっ…』と何言ってるか分からない感じで顔を真っ赤にしていた。




「は、はーい!どんどん行くよー!ここ戻してー!ふりふりー…よし、つかんでー!行くよー?せーの、王様だーれだ!」


「俺!俺俺俺!俺ー!やったぁー!2番と5番が変顔をする!笑った方が罰ゲーム!」


「え?え?僕?え?僕…変顔するの?」


「僕のことを君が笑わせる?ふ、そんなことができるのでしょうか?」




2番はトリンで5番はレイだ。


皆は文系2人による何とも珍妙な変顔の戦いを見守ることに。


ーー30分後ーー


「え?え?いつまでやるんです?笑ってくださいよぅ」


「君が笑えばいいだろう?そんなつまらない顔で僕が笑えるとでも思ってるのか?」


「はいはいはいはいはーい!ストーップ!結果!2人とも罰ゲーム!」


「ヒーヒー…息が…い、息ができなぁ…ヒィー」


「…なぜか王様が瀕死なので罰ゲーム先送りにしまぁーす!ここ戻してー!ふりふりー、つかんでー!行くよー?せーの、王様だーれだ!」


「え?え?ぼ、僕?えっと、4番さんが6番さんに…き、キスをする!」


「あ、わたし6番です」


「えへへー私が4番だよう!」


「ふ、ふええ!?」




6番はミミちゃんで4番は私だ。


私はミミちゃんの元まで行き、さくらんぼの様な色をしてるぷるんとした唇に『ちゅっ』と触れるだけのキスをした。


みみちゃんは顔を真っ赤にし『きゅうぅ…』と目を回し倒れてしまった。


レイとヴェルは声を揃え『羨ましい…』と言い、ティルは『ひー、気絶、気絶ー!』と笑ってる。


多分ティルは今たんぽぽの綿毛が飛んでいっても笑い転げるのだろう。


リュカは『まぁ、優里から口付けされたら皆そうなるわよね』と憐れみの目をミミちゃんに向けているし


トリンは『せ、聖女さまからのき、き、き、き…!』と言い、何故かトリンまで気絶した。


「…6番と5番はここに置いといて~、はい皆筒に入れて~、ふりふり、ふりふーり、掴んで!せーのっ、王様だーれだ!」


「あ、僕ですね。…では、2番が4番の好きなところを言う。で、どうでしょう?」


「あ、俺2番だ」


「んん?私4番!連続4番だよー!」




ティルが2番で私が4番だ。


なんと連続で私だ、そしてティルが何を言ってくれるのか楽しみに待ってると




「…俺は優里の笑顔が好き。」


「え、えへへありがとう?」


「優里はあったかい。俺の冷たい心をその暖かさで包み込んでくれたんだ、優里の好きな所を全部言おうと思うと…1日じゃ多分、足りない。だから…えっと…。…。み、見てんじゃねぇよばぁーか!」




顔を真っ赤にしてモジモジしてる私と同じく顔を真っ赤にして辿々しく話すティルを、皆は母性に溢れた暖かい顔をして見ていた。


皆の視線に気付いたティルは相変わらずの反応をした後にどこかへ走り去ってしまった。




「なんか、王様ゲームしてるだけなのに人がどんどんいなくなるんだけど…?」


「そりゃ…あんた…自分の顔を鏡で見なさいよ。そんな女神の様な美しさでキスなんてしたら普通気絶するわよ」


「…俺も時々やばいす」


「…僕もまだ、気を抜くと魂持っていかれる様な気がしますね」




こうして王様ゲームは終了したのだが、後日壁際に立っていたメイドからの報告を聞いたおじさま王様が聖女宮へと突撃してきて『そんな面白そうな事するなら呼んでよ!』と謎の拗ね方をして来た。



…今日も1日平和だった。


この平和がずっと死ぬまで続けば良いなーと私は思ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る