5 隻眼のアーク
どうやら前日は皆かなり飲んだようで、今日の訓練は昼からになったようだ。
俺も宴会場で潰れて寝ており、朝方までの酒が残っていたため、昼下がりに少し遅れて訓練場を視察する。
「親父! 久しぶりに手合わせしてもらいたいんだけどよぉ!」
めちゃくちゃ嬉しそうに言うアーク。
「ダメです。ご主人様は昨日お帰りになったばかりなんです、無理を言わないで下さい。」
どうやらテナは先に訓練場の視察をしていたようだ。
「おはようございます、ご主人様!」
「あぁ、おはよう。昨日は楽しくてつい飲みすぎたようだ、この時間にすまない。」
「そうですよ! 飲み過ぎです! 酔っ払って昔のご活躍された武勇伝を延々と聞けて私は幸せでした……」
テナもニコニコしながらめちゃくちゃ嬉しそうだな。まあ、俺の不在が長かったのもあるのか。
「それで、アーク、手合わせだったか。」
正直酒が残っていて頭が痛いが、長く離れていたしな……。
「おお!相手してくれるのか?!」
「あぁ、いいぞ、俺も久しぶりだからな、ちょうど動きたかったところだ」
「おっし! おい! てめーら! そこどけろやぁ、親父! こちらに!」
そう言いながら案内されたのは訓練場の中央にある円形で少し高く盛り上がっている場所だ。
「ご主人様! 無理はなさらないで下さい!」
「あぁ、心配ありがとう、もし怪我したらテナにつきっきりで看病してもらうからな!」
「ご主人様! 無理して下さい!」
いや、どっちだよ。
「アーク! なんでもありでいいんだな?」
「おぉ! もちろんでぇ! 俺は親父に胸借りる気持ちでいくぜぇ!」
「じゃあこっちも少しだけ本気でいこうかな、お前のタイミングでいつでもこい」
結論、ボッコボコにした。
ゲームとしてやっていた時は、戦闘のシチュエーション毎に立ち回り、コマンド選択して、技を発動し、スキルのクールタイムがあって、何よりもラグがあった。今回も立ち回りや剣技スキル、魔法の発動には変わらないが、圧倒的に発動の体感スピードが速い、これはラグとかどうこうじゃない。
「やっぱり現実かぁ」
雲ひとつない青空から目線を落とすと、サークル上で仰向けにヒクヒクと伸びているアーク。
アークは決して弱く無い、そもそもアーク率いる陸地第1部隊は最前線に先陣し、敵に1番乗りで戦闘する特攻部隊だ。もちろんこの部隊だけで敵を殲滅、駆逐した事も多数ある。そして何より隻眼のアークの異名は伊達では無く、その言葉のまま一騎当千に比類され恐れられる。
「……やっぱり、親父は強いぜぇ……」
「さすがご主人様! すごいです!」
テナに回復魔法のヒールをかけられ、上半身だけ起き上がるアーク、部隊長なのにやりすぎたかと思えば、周りの観戦していた隊員達も興奮しざわついてるようだ。
「ボス、ボコボコやん!」
「いや、シュガーの親父が強すぎるんだって、ボスが子供みたいに扱われてたぞ」
「シュガーの親父……昨日お帰りなんだろ? 化け物か……」
「俺、親父の戦闘してるとこ初めてみたよ! かっけえええ」
「一生ついていきます!」
戦闘を観戦していた隊員達は各々に感想を言い合う。
「皆! シュガーの親父に最敬礼!」
「おす! お疲れ様でした!」
中隊長の一言で数百人が中腰になるのも圧巻なんだが、最敬礼がこれって……、どんな教育やねん……、いや俺がそういう風にしたんだけども、なかなかにイカつい。
「アーク、たてるか?」
「おう、もっと訓練して修行を積まないと、親父の足元にも及ばないな……。燃えてきたぜっ」
すごい、一番興奮してるよ、なにこいつ、怖。
その日、アークはもちろん、隊員達も興奮しめちゃくちゃ訓練したらしい。
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