第21話 救いを求めるもの達。ファイルナンバー、屑が一杯。

「すみません。ココが相談室でしょうか?」

「はいどうぞ」


 彼は、啓白 恭一けいはく きょういち

 大学側からのメモに、屑ですと注釈が付いていた。

 大学としては、裁判沙汰とか、逮捕されるのは外聞が悪い。

 出来るなら、闇の中に葬ってください。


 なかなか過激なメモだが、それを付けたのは、大学の相談員。師分 要しわけ かなめ四八歳。課長補佐。違いの分かる男と呼ばれているらしい。


「えーと。なになに。声をかけられるままに女の子と付き合い、色々いたした。それがバレ。裁判や結婚詐欺で訴えられそう?」

 ファイルを読み上げ、ちらっと彼を見ると、そんなことは気にせず部屋の中が気になるようだ。


「結婚するとか、婚約しようとか何か約束はしましたか?」

「いいえ。あー、ただ。料理の美味しい子に、毎日でも食べたいとかは言った気がします」

「はい。ギルティ。直樹さんコイツ死刑にしましょう」

 瑠璃がびしっと指をさす。


「指をささない。他には?」

「えー。どうだったかな。そんときに適当に決めるから…… うん覚えて無いっす」


「君、ちょっと待っていてくれ」


 奥に集まり相談をする。


「単なるバカだろ。闇も関係が無さそうだし。退学にして、とこかに埋めて貰おう」

「そうね、それが良いわ」

 珍しく小雪が薄情だ。


「すみません。そう言うことでお願いします。本人を連れて裏門へ行きますので」


 そうは言ったが、一応被害者にも話を聞き裏取りはする。


 その結果、彼の姿を見た者は居ないことになった。



 むろん普通にヤミ金対応とか色々したが、原因によっては、強制的に働いて貰ったり、豪華客船で、アトラクションに参加をしてもらったり、ほとんど世間的には存在しない鉱山で、作業に従事をしてもらったり。


「このファイルってさー、見ているとなんだか私たち。悪の組織っぽいよね」

「問題のある奴が、そんな奴ばかりだからだろ。この前なんて小学生の彼女が欲しくて自宅に招待をしたって。完全に誘拐じゃないか。彼女がなんだかぐったりとして、どうすればいいでしょうって? 大学の相談室もどうしてこっちに回してくる。素直に警察案件で、さっさと衰弱をした女の子を救出しないといけないだろう」

 そう言って一気に酒をあおる。


 そう、意外とストレスが多い。

 ルシファーの言い分が分かる気がする。

 堕天をするぞ。


 そんな事を考えていると、例のお言葉から警告がくる。


 説明以来だな。


『堕天と言うのが、力の反転という意だと解釈。警告を与える。反転をすれば宇宙のバランスが取れなくなる。よって、危険を防ぐためこの宇宙を消滅させる。上位宇宙の安全を優先。権限により、この宇宙の物質と精神体すべてを消滅させることになる。闇が上位に来た場合。また危険がある場合、強制消滅をするから気を付けよ。自己で、昇華できないゆがみは、精神を上位に向けよ。良いか、下方ではない上位だ。お相手次第だが繋がった場合一気にお前の魂は上位へと上がることが出来る。心を開き上を見ろ……』

 そう言って消えていった。


 ふむ。全く意味が分からん。


 そして、悪い事を考えたから、意地悪なのか、すごく頭が痛い。

 

 ああ、そうか、やけ酒をしていて寝込んだのか。


 すると、バンという音が聞こえ、視界が変わる。


 土が焼け焦げ、空は赤く。空気は吸い込むだけで肺が痛い。


 見渡す限り死体が転がり、その向こうの方で、炎を纏った巨大な何者かが真っ赤になった鎖に縛られている。

『そちらではない。上だ。下を見るな』

 頭の中に声が響く。


「そんな事を言っても、空は赤くて曇天……」

 そう思ったが、光が一条いちじょう降ってきて、地面に当たる。

 そして、その光が当たると、大地が命を吹き返し風が巻き起こる。

 その風は、腐った空気を浄化して一気に、世界は明るくなる。


 あの巨人も炎から解放されて、鎖が消える。


 血に染まり真っ赤だった体もいきなり綺麗になり、現れたその顔は俺だった。

 ご丁寧に、堕天した場合の、俺が起こすことを見せてくれたようだ。


 そして光に包まれた俺は、存在だけで世界が浄化され、その足下に人々が跪く。


 それはちょっと気持ち悪いような笑顔だが、それを求めていることが分かる。

 そう浄化と救済。


 周りに集まる、十一人と少し大きな集団。


 それが集まったときに、さらに金色の光が降ってきた。

 その金色は透明感があり、何かが違う。


 ふと見上げると、光の中に見える、見たことのないような文明。

 自然物が、宇宙の真理に従い配列されると、世界は浄化され、無限ともいえそうなエネルギーが泉のように湧いていた。

 驚くことに、上の人々はそれを口にしていた。


 体から光があふれ、光により翼が創られ、手を触れずに物を動かす。

 重機など無しで、大きな石が持ち上がり運ばれる。


 そう、その光は使い方により十二時間から二十四時間。


 あの奇蹟ともいえる、エネルギーの水。

 欲しい。


 なぜかこの時、俺は強くそう思った。


 すると降ってくる一本の光の糸。

 手を振っても触れられず、ぴとっと、額に張り付き、次の瞬間宇宙の決まり事が脳へとと流し込まれた。さっきまでの頭痛などかわいいもの。

 きっと脳が、美味しく食べられるくらい、焼けたのではないかと思った。


 そうかい。配列と比率。

 バランスね。それが扉を開き、繋ぐことが出来るかぎ。

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