第13話 帰宅と甘えんぼ
忘れていたわけではないが、成田でお土産にぴー○っつ最中を買う。
あーうん。瑠璃にね。
バチカンには、おみくじとお守りしかなかったからと、言い訳しよう。
小雪用の修道服を貰ったから、これでも良いが。
途中でサイズが変わって、ため息を付きながら、もう一枚くれたから丁度二つある。
二人に着せてみるのも、なかなか良いかもしれない。ふむ…… うへへっ。
そうそう、だから今。
帰ってきて空港だけど、何というかまがまがしい気配がしている。
日本にいなかったのは、少しの間だったのに、危険な匂いがする。
神崎さんも気が付いたようで、浄化を混ぜたシールドが、今開かれたが、ちょっと拍子抜け。
意外と力に差があるようだ。キリッ。
この辺り全部を包むように、一気に展開をする。
「素晴らしいですね。これほどの差が……」
神崎さんも気が付いたようだ。
「あのう、お聞きしたいのですが、魔というか、手足の生えたコウモリ。退治した事あります?」
「最初に家のビルに来たとき、二体か三体かは倒しました」
「うん。もっと倒しましょう。そうすると、もっと力が強くなります」
「そうですか。判りました」
嬉しそうにしてくれて、何よりだ。
その時、
だが柔らかな光に包まれた瞬間に、思い直し、搭乗をやめた。
入国手続きで少しもめたが、なんとかなったようだ。
今度からは、専用ゲートが使えるらしい。
車に乗り、我が家となったビルへと帰る。
道中でも、何か感じるたびに浄化をしてみる。
高速道路で周りに対して、細かに嫌がらせをしていた男や、生命保険をかけ、死に場所を捜していた男。そんな連中が、いきなり思いとどまる。
「うーん? おかしい。暗示は効いていたはずだ」
立ち入り禁止のビルの上。
少しワクワクしていた男が、風景をぼーっと見ていた。
適当に拾った名前だが、
悪魔第二形態で、全く見た目は人の姿だが、力はある。
アメコミのヒーローのように、スチャッと地面に立つ。
たまたま目撃して、目があった女の子達。
驚きの感情と、恐怖を織り交ぜた心理状態。それに乗じて、心に侵入される。
「行こうか」
「ハイ」
たまたま出会っただけで、魅入られてしまった二人。
通う大学で、使徒を増やすことになる。
悪の方だが……
精神的なものでは無く、直接体の内側に因子を植え付けられた。
それは、よくある病気のように、行為により、伝染拡大をして行く。
その広がりは、まるでねずみ算のように、急激に。
「おー。帰ってきた」
まだ暮らして、わずかだが帰ってきた感じがする。
エレベーターで上がり、一つ下で神崎さん達が降りる。
だが、二人残る社員さん? 上に上がり、部屋まで荷物を運んで貰う。
良いと断ったが、彼らの仕事のようだ、ちなみにチップも必要ない。
「どわー。なんだか疲れたわ」
寛いでいる小雪だが、すぐ後に泣くことになる。
お気に入りのパジャマが、縮んでいたそうだ。
「気に入っていたのに……」
「アッソウ。ソレハザンネンダネ」
そう言いながら、自分の荷物を出す。
国産のビールが欲しい。
前の家とは違い、いつも一定数冷えている。
脇にあるポータブルワインセラーや、棚に入っているウイスキーなどは怖くて手が出せない。
急に変わった環境。
足軽が、いきなり抜擢されても、大名のような振る舞いは出来ない。
それも、宝くじのようなものだ。
俺に何かがあったわけじゃない。そんな事は判っている。増長をしないようにしよう。
宝くじが当たると、多くは不幸になる様だ。
少しシリアスに考えていたら、後頭部にぽよんとした感触。
「ねえ、帰ってきたら。和食…… 親子丼とか丼物が食べたくならない?」
「ああ良いな。じゃあ、今晩の食事は断っておいて、出るか?」
「あっそうかぁ。もう準備しているわよね。じゃあ」
そう言って小雪は走っていき、タブレットを操作する。
今日のメニューとかが表示されており、食べられないものが指示できたり色々便利なタブレット。いや本当は、今日の業務とかそんな予定を見るものだが、予定はすべて空欄だ。そのおかげで、単なる居酒屋の注文用タブレットとなっているが、本当は高機能の代物なのだよ。すまない。ふがいない主で。
減らすのではなく、追加で親子丼を頼んだようだ。彼女は問題なく環境に慣れている。
気のせいか、落ち着きが出て、全体的にずっしりと……
やがて、時間になり瑠璃はとぼとぼと帰ってきて、俺達がいることに気が付く。
「うあぴゃ、おかえりぃー」
とか言いながら、飛んできた。
「んちゅ」
キス責めをされる。
やがて満足をしたのか、前に回ってきてぎゅっと抱きついてくる。
「ひどいよ。何処に行くのかも言わずに」
「ああそりゃ、俺達もいきなりで、聞いていなかったんだ」
「それは…… で何処に行ったの?」
「イタリアのローマ。バチカンだ。教会の総本山」
「へー。何をしに?」
「使徒になる為の儀式? 契約かな。認めて貰うだけだったが」
「よくわかんないけれど。お帰り」
そう言って、マーキングのようにぐりぐりされる。
「また、あんたは」
そう言って小雪が来たが、瑠璃の第一声は……
「誰あんた?」
凶悪な一言だった。
「少し、大きくなったが小雪だ」
「小雪って、すでに雪だるまになっているじゃない」
その言葉に、本人も自覚はあるし、結構効いたらしい。
「ちょっと、ジムに行ってくる」
「いってらぁ」
小雪をジムに追いやり、俺達はベッドの上でプロレスごっこをした。
力が増したのか途中で、「朝までコース」と言っていた瑠璃だが、早々にギブアップをした。
途中から、「しんじゃう。死んじゃうから…… ああああっっ」
それしか言わなくなった。
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