第10話 その行為は、甘美。救済のことだからね。

「まあ。出会いにカンパーイ」

 表面的には、おとなしく飲み会が始まっていく。


 ただ少し、ペースがおかしい。

 二人が二人とも、俺を潰そうとする意図が見える。

「はいはい。飲んで。あのー、したこと無いので、しても良いですか?」

「うん、何を?」

 そう聞くと、おもむろに瑠璃は、口に酎ハイを含むと飛びかかってくる。


 キスをされて、流し込まれる。檸檬味の酎ハイ。

「どう? キスはやはり檸檬味でしょ」

 

 当然それを見て、おとなしくしている小雪では無い。

 熱いわね。

 そう言ったと思ったら、一気に上を脱ぐ。

 いやエアコン。ボロいけど……


「あら、下着まで脱げちゃった。でも、今更だし良いわね」

 妙に勝ち誇った顔。


 そんな事をすると、どうなるのかは分かっている。


「一人で着ているのは変ね」

 そう言って、もうね。


 何処の、リア充だよ。

 たった数日で変わってしまった世界。

 想像もしていなかった。


 両側からぴったりと張り付く二人。

「少し恥ずかしいから」

 なら脱ぐなよ。そう突っ込みたい。


 瑠璃が常夜灯にしようとしたが、小雪が虐める。

「明るくないと、場所を間違えられるわよ」

 暴露されて、地味に俺にもダメージが入る。


「さすがに、もう間違えないさ」

 そう言ったら、瑠璃が爆弾を落とす。


「導けば良いし、どっちでもいいわよ。たぶん。どっちも経験が無いけれど……」

「なっ…… そうねそう言えば」

 なぜか、小雪までそんな事を言い始める。


 もう、俺から何かやばいものが、出ているんじゃないかと勘ぐってしまう。

 見えてないだけで実際出ていたが、人を救うものだから許して貰おう。


 そうしてまあ、「一緒にいたいなら、仲良くしなさい」と命令をする。


「はーい」

 表面上はそう言って、握手をする。


 でまあ、着てないことだし、小雪が這い上がってきて明るい中でそうなると、羨ましそうにしていた瑠璃も混ざってくる。


「二人で仲良くしなさい」

 行為途中で、そう言った時には、なんだかすごかった。


 うん、まあ結果。仲良くなったよ。




 まあ、それで朝になり。瑠璃達が言い始める。

「絶対、買い物に行って普通の部屋にする」

 そんな事を言い出して、部屋から引っ張り出される。


「先ずはラグかな?」

「そうね。食器も欲しいし、着替えを入れるタンスも」

「じゃあお金を出して、住める部屋を探さない? 小雪さんて仕事をしているんでしょう。なら敷金とか出せるよね」

 言っていることはまともだが、多少瑠璃の顔が悪い顔をしている。


「とっ。当然よ任せなさい」

 そう言って、三人で都合の良い所をマップで探し、場所を決める。


「じゃあ。この辺りで不動産屋さん。おっ、あった。不動産安心堂」

「行こう」

 そう言って、二人に手を引かれる俺だが、さっきから妙な波動を感じる。


 魔とは違う。

 魔は、周りに散らばっているから、鬱陶しいので浄化をしながら歩いている。

 もう犯罪に巻き添えになるのは、面倒だし避けたい。この辺りだと、またあの警官がやって来る。あいつはごめんだ。



 早朝と言うには遅い、朝九時。


 日曜日の町中で、俺達は、いきなり黒服の集団に囲まれる。

「突然のご無礼。お許しください」

 一人が前に出て頭を下げてくる。

 思わず、二人を背中側にかばうが、波動がね聖のものなんだよ。


「どうぞ」

 促されて、おっきめのミニバン? に乗り込む。


 連れてこられたのは、遠くないが大きなビル。


 そこの地下に入って行く。


 奥に入ると、もう一段扉があり。それが秘密基地のように開く。


 車でそこに入るが、そこに並ぶ車は高そうな車ばかり。


「ご足労をおかけいたしますが、こちらへどうぞ」

 この建物。誰かの仕業って、当然、目の前のオッサンだろうが、聖的なシールドが張られている。


 車から降りて、エレベータに乗る。


 途中でいきなり視界が開け、景色が見えはじめる。

 この建物。周囲より圧倒的に高いから、すぐに周りのビルを見下ろすことになる。


 やがて止まる。

 停止階は五十階。


「どうぞ」

 促されるまま付いていく。


 会議室の一室。

 なぜか促されて、上座に座らされる。


 そして、両脇に小雪と瑠璃が座る。


 そしてオッサン達が順に入ってくるが、椅子に座らず絨毯だが、床に座る。

 その中で対面。

 つまり、三十人は座れそうな、長い机の端と端で、にらめっこが始まる。


 聖のものだが、かなり弱い。ふむっ。グリ○ィ○ドールとか言ってしまいそうだ。


「かなり力が弱いな。シモンか?」

「「「おおおっ」」」

「ご推察通りでございます。ですが、あなた様のお力が強く。私には見る事がかないません。使徒ネームをお教えください」

 オッサンがそう言ってくるが、使徒ネームってなんじゃらほい? だがまあ。

ⲁⲣⲟ𝛓ⲧⲟ𝓵𐌵𝛓 𝓳ⲟⲏⲛヨハネだ」

 そう伝えると、あろうことか机の上に突っ伏した。


「いや、頭を上げてください」

 なんか、カタカナでしゃべらないと、言霊がある様だ。

 あとで聞いた。


 その後は、俺の面接だね。

「今何をされていますか? どこに住んでおりますか? お金? 必要なら言ってください」


 そんな感じで、最上階にあったゲストルームを貰ってしまった。


 オッサンは、神崎 慎一郎かんざき しんいちろう

 先祖代々実業家。


 搔い摘むかいつまむと、先日、光を受けた。

 そして、昨日。

 すぐ近くから聖の波動を感じたが、このわずかな時間で膨大になり。これは捨て置けないと会いに来た様だ。


 何だろう? 瑠璃とエッチをしたから増えたのか?


 そう思ったら、救済をすれば力が増えるらしい。

 それも、金を使ってする救いではなく、魂の底から救うと有効らしい。


 オッサンが説明をすると、瑠璃がなんだか納得をしてくれた。

 事後、ものすごく心も体も軽なったようだ。

 抑うつされていたようなものが、男嫌いと共に消えたと言っていた。


「世界をお救いくださいっ」

「やだよ」

「えっ……」

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