第54話 青柳時忠---side3

僕が大学に入ってからは、ますます一緒にいる時間が増えていった。

そして、ようやくお互いの気持ちを確かめあった。


「僕はずっと姫乃が好きだったよ」

「私も。でも、時忠は高校生だったから、私みたいな年上はそういう対象として見てもらえてないって思ってた」

「そんなことない。兄の事件のことがあったから、ずっと何も言わなかっただけ」

「お兄さんの事件?」

「うん。兄が大学2年生の、まだ19だった時、クラブで友達何人かと女子高生を呼んで酒とタバコをやってるところを捕まった。それで、事件になるところを父親がいろんなところに手を回して揉み消したんだ。大学生の姫乃が高校生の僕と付き合うことで、姫乃の方に悪い噂がたつのは嫌だったから」

「考えてくれてたんだ」

「でも、もうそれも考えなくて良くなった」

「うん」

「姫乃、ずっと一緒にいよう」

「一緒にいたい。時忠と、ずっとずっと」


初めてキスをした。

初めて姫乃と抱きあった。



これまで何でもあきらめてきた僕が、初めて大切なものを手に入れた。

この世で一番大切な人を。

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