第44話 伊藤 紗香---side10

教室に忘れ物をしたことに気が付いて、取りに戻ったところだった。


後ろのドアから入ろうとしたら、わたしが座っていた席のあたりに月島さんと風早がいて、何か話しているのが目に入った。

あそこに取りに行くのはちょっと嫌だった。


このふたりは本当によく一緒にいる。正確には藤原さんも入れて3人だけど。

月島さんは風早のお兄さんとつきあっているって聞いたことがあるけど、風早との距離感おかしくない? 風早は彼氏の弟ってことでしょ?


入りづらくて、そのまま見ていたら、風早が、月島さんの頭をくしゃってした。

あんなの、彼氏が彼女にやるやつじゃん。


それで、風早が、そのまま月島さんにキスしようとした。


嘘……


なんでだか途中でやめちゃたから、一瞬わたしがいることに気が付かれたのかと思ったけど、そうではなかったみたいだった。

その後すぐに風早は、わたしがいる後ろのドアの方に向かって来て、ドアの影にいたわたしに気が付いて、少し驚いたから。

でも、何かいうわけでもなく行ってしまった。


ますます教室には入りずらくなったから、忘れ物のことはもう明日にしようと思って、廊下を見たら、前から瞬が歩いて来てた。

なぜだか、教室を一個一個覗きながら。

何をしているのかと思ってたら、風早が出て行った後の、今は月島さんがひとりだけの教室に入って行った。

わたしが後ろのドアのところに立っていることには気が付かないで。


何か話してた。


瞬が、いきなり月島さんを抱きしめた。


わたしの目の前で。


何あれ……


なんで?


どうして?


さっきまで風早と話してたじゃん。キスしようとしてたじゃん。


かっこいい彼氏いるじゃん。


瞬……


なんで月島さんなの?


どうしていつもわたし以外の誰かなの?



気がついたら、ふたりに詰め寄っていた。

さっきまで思ってたことを全部言葉にしてた。


一度言葉にしたら、とめられなくなった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る