第43話 澤田 瞬---side28

「何で? どうして、わたしばっかり悪者みたいに言うの……」


2人が出て行ってから、紗香は堰を切ったように泣き始めた。

そして泣きながらオレに言った。


「わたしは……ずっと……瞬のことが好きだったのに……どうして瞬は、会ってそんなに経ってもいないような人を……好きになるの?」


そんなの、知るかよ……


オレは、オレの方が後から月島に出会ったからって、なんでオレじゃダメなんだよ? って、ずっと思ってた。


目の前で泣いている紗香より、紗香の言ったことで月島がどれだけ傷ついたかの方が心配だった。


オレのせいだ。


紗香は幼馴染で、ずっと友達としか思っていない。


「紗香とはずっと……」



どうしてだか、風早のことを思い出した。

あいつがこっぴどく女の子をフルのを何回か見たことがある。


ああ、そうか……

ここで泣いてるからって優しい言葉をかけるのは違う。それだとこいつはずっとこのままなんだ。


「紗香とはずっと……今までもそうだったけど、この先も、友達以上になることは絶対にないから」


「そんなの……先のことなんかわかんないじゃん」


ほんの少し、笑いかけてもらえただけで、期待する。

相手にとっては何でもない言葉でも、もしかしたら、って希望を持ってしまう。


「わかるよ。オレ、そんなふうに泣いてる紗香を見ても、何も感じないから。勘弁して。もう友達でいるのもめんどくさい」



紗香の表情で、ひどく、傷つけたのがわかった。



オレが言った言葉で紗香は泣き止んだ。

そして、それ以上何も言わなかったから、オレは紗香をおいてその場を離れた。



紗香は大切な友達……だった。



風早も、誰かを傷つける時、こんなふうに自分も傷ついてたんだろうか?

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