第42話 澤田 瞬---side27

「ちょっと怪我したくらいですぐにテニスだって辞めちゃうような人じゃん! こっちなんてどんなに頑張ったって、足元にも及ばなくても、それでもずっとしがみついてるのに! すぐにあきらめちゃうような人なんだよ!」


「紗香」


「瞬は、どうして? 月島さんのどこがいいの? わたしの方が、ずっと瞬と一緒にいて、誰よりも瞬のことわかってるのに!」


「いい加減にしろよ!」


「自分は風早のお兄さんと付き合ってるくせに、風早にもいい顔してさ、挙句に瞬にまで!」


紗香が、月島を責め続ける間、月島は何も言わなかった。



月島は、オレにいい顔なんてしていない。

普通に接していただけ。

それを特別に思いたかったのはオレの方。

さっきだって、思いっきり拒絶されたのをオレが強引に……



「廊下にまで声聞こえてる」


風早が教室に入ってくると、突っ立ってる月島の背中に手を回して、外に連れ出そうとした。月島がそんな風早を見上げた。


「ごめん、オレが待たせたから」


風早はそう言うと、月島を無理やり教室の外に連れ出した。

そうしておいて戻って来ると、静かに、それでいてひどく冷たい口調で紗香に言った。


「伊藤さんが澤田を好きだってことに、美雪関係ないでしょ? それから、オレら兄弟と美雪のことは、伊藤さんにはもっと関係ない」


そこまで言うと、今度はさっきよりもっと紗香に近づいて、小声だったけれど、明らかに怒った様子で言い放った。


「何も知らないくせに口出してくんなよ!」


風早はその綺麗な顔で、紗香を睨むと、次はオレに向かって言った。


「なんとかしろよ。迷惑なんだよ」

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