第41話 澤田 瞬---side26

文学部の校舎に来る用があったついでに、未練がましいと思いながらも、月島の顔を見るだけでもと思って、ドアが開けっ放しの教室を覗きながら歩いていた。


最後の教室を覗いた時、窓の外を見ている月島の後ろ姿を見つけた。


「何やってるの?」


声をかけながら近づいた。


月島はゆっくりと振り向いた。


「人を待ってる」


心なしか元気がないように見える。


「何かあった?」


「どうして?」


「元気がない」


「気のせいだよ」


「あのさ、話聞くよ?」


「ごめんね。澤田くんには関係ない」


はっきりと線を引かれたのがわかった。

わかったのに、どうしても放っておけなかった。

泣きそうな顔をしていたから。


あきらめたはずなのに。


「オレ、何かできることない?」


「……あるよ」


「何?」


「放っておいて」


「それだけは、無理」


あきらめたはずだったのに。


彼氏がいるのも、それがどんなやつかも知っている。

それでも、目の前で好きだと思っていた子が泣きそうな顔をしているのを、放っておけるやつがいたら知りたい。



月島を抱きしめていた。



「泣きそうな月島を放っておけない」



「瞬? 何やってるの?」


紗香の声で、月島がオレを強く押しやった。

紗香はオレに話しかけたのに、月島を睨んでいた。


「なんなの?」

「紗香?」

「とらないでよ!」

「お前、何言ってんの?」

「いっぱいいろんなもの持ってるじゃん! なんで瞬なの? 彼氏とケンカした? だからもう次? 思わせぶりな態度とかやめて」

「紗香、やめろって」

「瞬はこんな人のどこがいいの?」


オレのしたことが、更に月島を傷つけることになった……

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