第37話 風早 司---side3

日本へ帰って、何か面白いことを探していた。

アメリカでは21にならないと酒は違法だけれど、日本では20で合法だから、最初は夜飲み歩いていた。

何もしなくても女の方が寄って来るから遊ぶ相手には困らない。



雅正宗と出会ったのは夜の街だった。

同じ匂いがすると思ったら、華道雅流の3男坊だった。

上に兄が2人いる正宗は、小さな頃から、いけばなを強要されることもなく自由に育ってきたと言った。


「風早流かぁ。だるいな」

「どうだろう? 生まれた時からそれだから」

「でも、あれだろ? 付き合う相手は家柄がどうとか、結婚は家でするものとか、今時ないようなこと言うだろ?」

「別に結婚なんて誰としても同じだろ」

「そういうこと言うんだ」

「夢なんか見ない方が楽」

「落ちてんなぁ、お前。時忠と似てる」

「誰それ?」

「青柳流のとこの次男」

「あのでっかいとこの? 知りあいなんだ」

「お前んとこの方がでかいだろ。海外にも進出しまくってるって聞いたけど」

「オレ、全然関わってないから」

「そういうとこも時忠と一緒。呼び出すから一緒に飲もうぜ。年はひとつ下なんだけどそうは見えないから」

「いいよ。面白そう」


人が楽しくしていたら、少しばかり派手な女が邪魔をしてきた。


「ねぇ、隣いい?」


正宗と顔を見合わせた。

やっぱりな。こいつとは気が合いそうだ。


「悪いけど、俺ら2人で飲みたいんだよね」

「そ。それにオレ、彼女いるし」

「彼女いるとか関係ないしぃ」

「これに、勝てる?」


スマホにあった写真を見せると、女の表示が変わるのがわかった。


「あっ、じゃあ、彼女と仲良くね」


女が行ってしまった後、正宗がスマホを覗き込んできた。


「まじか。JKじゃん。しかもめちゃくちゃ美人。JKの彼女とか犯罪じゃないの?」

「よく見ろよ」

「ん?」

「オレだよ、これ」

「えっ!」


正宗が何度もスマホの画像とオレの顔を見比べた。


「あ、まぁ今の時代、服装も性別も自由だしな」

「ふうん。じゃあ、オレと付き合う?」

「えっ、あっ、うーん……」

「まじで考えんなよ。これ、学祭でやったコスプレ」

「……ちょっと本気で考えたのに」

「嘘だろ?」

「嘘だよ。でも、その画像くれよ」

「何すんの?」

「俺もめんどくさそうな女に彼女だって見せる」

「いいけど」


そんな理由で連絡先を交換した。

画像を送ると、正宗はわざわざ引き伸ばして見ていた。


「肌とか何これ? その辺の女よりよっぽど美人だし」


つるむのはめんどうだから、だいたいひとりで飲んでいたれど、正宗は面白いやつで、初めて会った時からこんな感じだった。

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