第33話 澤田 瞬---side25

なぜかユキさんも混ざって、オレの過去の恋愛経験を根掘り葉掘り聞かれた。


「もうオレの話はいいからさぁ、次は風早の彼女の話聞かせろよ」

「オレ? オレ今まで彼女いたことないけど」

「えっ? まさか童……いや、そんなわけないよな……えっ? だったらさっき一緒にいた女は?」


風早はやたらウケたみたいでしばらく笑っていた。


「恋愛とかは?」

「したことないよ」

「待て。思考が追いつかない。好きなやつくらいはいただろ?」

「それはね」

「その相手とは付き合ったりしなかったってこと?」

「オレはただ好きになるだけ。と言ってもそれすら、ないに等しいけど」

「ごめん、よくわからない」

「オレは、いつか親の決めた相手と結婚するから。恋愛なんて無駄」

「そんな今時……」

「あるんだよ、そういうの。その代わり、オレはこうしてバイトもせずに好きな酒が飲めてる」


ちょっと待て……弟でこれなら兄の方は?


「兄貴の方は大丈夫。数百~数万分の1の出会いを引き当てたんだから」

「ごめん。ますますわからない。その具体的な数字何なんだよ?」

「司ちゃん、ちょっと病んでるから気にしない方がいいわよ。でもぉ、司ちゃんには、いざとなったらワタシがいるから。ねっ」

「そうだなぁ。ユキちゃんとの子供も悪くない」

「でしょう!」


いや、ユキさんって子供産めるのか? 近くで見たら男……いやいや、見かけで判断したらダメだよな?

そうじゃない。論点はそこじゃない。


「ユキちゃん、お茶漬け食べたい」

「いいわよ」

「澤田まだ飲む?」

「オレはもういい……」

「じゃあ、お茶漬けこいつのも」

「はーい」

「これ、残り適当に飲んで」

「ありがとう! 司ちゃん大好き」

「オレもユキちゃん好きだよ」



それでも混乱する頭で風早と食べたお茶漬けは、今まで食べた中で一番おいしかった。




別れ際に、風早が言った。


「お前には絶対無理だ。だから早く次を探せ。懲りずに合コンでも紹介でも数をこなせば、いつか何とかなるから」



風早は?

お前はいいのかよ?


そんなこと、聞いてもきっと、答えないんだろうな。

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