第28話 澤田 瞬---side21

大学が始まった日、朝一番に文学部の校舎に向かった。


国文科の教室を覗くと、すぐに風早は見つかった。運良く1人でいる。


「ちょっと話があるんだけど」

「何?」

「ここじゃちょっと」

「いいよ」


風早は大人しく階段の踊り場までついて来た。


「オレ、男には興味ないけど?」

「違う。雑誌、お前とお前の兄貴が出てるやつ見た」

「ああ、あれ」

「兄貴のインタビュー、あれって……」

「あんなの嘘に決まってるじゃん。兄貴のもオレのも風早のスタッフが適当に答えたやつだよ」

「でも、月島が見たら……」

「澤田のために教えてやる。あの雑誌が出た日、兄貴は京都にいたんだけど、書いてある内容知って、すぐに美雪に会いに行ってる。夜中に、高速のって5時間かけて。理解?」


それがどういう意味だかオレにもわかる。


「お前が心配することじゃない。もっとダメージ受けないとあきらめがつかないんだったら、他にも教えようか?」

「いや、いい。もうあきらめてるから。ただ……」

「ただ?」

「泣いてるとこは見たくない」

「大丈夫だよ」

「呼び出して悪かった」

「いいよ」



なんだ、オレなんか全然敵わない。

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