第24話 風早 司---side2
大学が春休みの間は楽だった。
校内はさすがに難しいらしく、美雪を見張るのはオレの役目だけれど、学校外では、調査員のやつらがついている。
正直そこまでやるか? って思うけど、あの母親らしいと言えば、あの母親らしい。報告書はオレのとこに回ってくるようになっているから、それも全部チェックしとけってことだ。
昼過ぎに起きて、することもなかったから家にいたけれど、夕方遊びに出かけた。
街をひとりでぶらぶらしていると、知らない女が声をかけてきた。
「風早司さんですよね?」
「はい?」
「一緒に写真撮らせてもらえませんか?」
「悪いけど、そういうのはちょっと」
これまでも声をかけられることはあったけど、名指しなんてされたことはなかった。
同じ大学のやつ?
それでも、2回目に声をかけられた時、さすがに変だと思った。
「風早さんですよね? お兄さんは今日一緒じゃないんですか?」
「本物だぁ」
「ねぇ、なんでオレの名前知ってるの?」
「え? だって」
「ねぇ」
声をかけてきた2人組の女の片方が、持っていた雑誌を見せてくれた。
「これ、見たから」
随分前に取材を受けた雑誌だった。
いつ発売とか、興味がなかったからすっかり忘れてた。
事前に家に送られて来てたんだろうけど、チェックもしてなかった。
撮影の時、一日だけ金髪にされた。金髪なんて中学以来だったけど、あの後金髪にしたんだった。雑誌と同じ頭だったから余計目立ったんだ。
「この本くれない?」
「いいですけど……」
「写真一緒に撮る?」
「いいんですか?」
「いいよ」
2人と一緒に写真を撮って、雑誌をもらってからすぐにタクシーに乗った。
車の中で記事を読んだ。
なんだよこれ……
インタビューなんてされた覚えないけど、オレの返答は無難なものだったからいいとして、兄貴のは……
すぐに兄貴に電話したけれど、スマホの電源が入っていない。
後援会のやつらと一緒なのか、充電されてないのか……
11時まわっても連絡が付かないから、泊ってるホテルに電話した。
「スマホ、何度も電話したんだけど?」
「スマホ? あ……電池がない。充電する」
「ふざけんなよ! 雑誌見たのかよ?」
「雑誌? 今日発売のやつ? 会場に若い子がいっぱい来てて、その中のひとりに教えてもらった。2月に取材受けたやつ、今頃発売なんだ」
「中は読んだのかよ?」
「読んでない。どうせ適当に書かれてるんだろうから」
「そうだよ、適当に書かれてたよ。いろんな女と遊ぶのが楽しい、って兄貴が言ったことになってる。自分で買って読めよ」
「わかった。すぐに買いに……あ……」
「何?」
「ネットのニュース……」
「ネットのニュースが何?」
「教えてくれてありがとう。もう行くから」
電話を切られて、スマホを見た。
ニュースの新着のタイトルを見て兄貴がすぐに電話を切った理由がわかった。
「風早流次期家元 風早恭一 その自由な私生活」
まるで雑誌の記事を裏付けるような内容の記事と写真だった。
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