第22話 澤田 瞬---side16

クリスマスは休みだったけれど、バレンタインは部活があった。

監督の基準がわからない。


冬休みに入って、校内は部活やサークルに入っているやつらだけになったし、それも毎日活動してるとこばっかりじゃないから、やたら静かに感じる。

いつもよりは早く練習が終わって、シャワーを浴びたら、今日はなんとなく寒気を感じた。いつもはそんなこと思わないのに。


バイクを取りに行く途中、知らない子に呼び止められらた。


「澤田先輩、これもらってください」

「ありがとう」


お礼を言ったら、すごいいきおいで走って逃げて行った。

チョコ?

高校までは、チョコをくれるのは母親と姉、あと紗香くらいだったけど、大学に入ってから、毎年いくつかもらうようになった。

でもだからと言って、何か言われるわけでもなく、渡し逃げ? 相手の名前もわからないからお返しもしたことがない。


バイクのとこまで行くと紗香が待っていた。


「さっきの子誰?」

「知らない」

「チョコもらったの?」

「多分。受取ったら逃げてった」

「去年も何個かもらってたよね? 今年は何個?」

「部活の前にももらったから、さっきので3個目」

「ふうん」

「何の用?」

「何って、チョコ!」

「ああ、ありがとう」

「なんか有難味なくない?」

「紗香もさぁ、いい加減好きな男作ってそいつにやったら? オレにばっか構ってないで」

「え?」

「なんか、オレらが付き合ってるとか変な噂流れてるみたいだし」

「変な噂……」

「そういうの、マジ迷惑だよな」

「迷惑……」

「紗香もそう思うだろ?」

「……うん」

「どっちかが誰か相手作らないと、ずっと言われ続けそうじゃん。そういう誤解されたくない」

「……そうだね」

「じゃあな」

「うん」



バレンタインにチョコって、貰えればそれだけで嬉しいと思っていたけれど、誰にもらうのかに意味があるんだと初めて思った。

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