第20話 澤田 瞬---side14

「澤田、スマホ、鳴ってる」


授業が終わって、ちょうど教室を出たタイミングで、一緒に歩いていた横山に言われた。


「え? オレじゃないよ。着信音が違う」

「でもお前のリュックから聞こえる」


そう言われてみれば、オレのリュックから聞こえる。

リュックの内ポケット中から音のするスマホを出すと、登録した覚えのない「桜」という名前と番号が表示されていた。

誰だこれ?

そう思いながら通話のアイコンをタップした。


「もしもーし」

「ちょっと! どう言うこと?」

「姉ちゃん?」

「あんた、わたしのスマホ間違えて持って出たでしょ!」

「え?」

「今かけてんのは?」

「友達のスマホから! で、あんたが今持ってるのがわたしのスマホ!」

「でも姉ちゃんのって、なんか派手なカバーだったじゃん」

「昨日機種変したからカバーないのよ」

「じゃあ、オレのスマホは?」

「わたしが持ってる」

「じゃあ、帰ったら交換して」

「それじゃあ困るの」

「何で?」

「長弘駅まで持ってきて」

「やだよ。家と反対方向だし遠い」

「5,000円あげる」

「交通費は?」

「あんたバイクじゃん」

「長弘駅までだとバイクだったら時間かかるから電車で行く」

「わかった。急いで持って来て。西口の改札出て、左にちょっと行ったとこにあるKIRAっていうカフェにいる」


電話を切ってスマホをまたリュックに閉まった。


「誰?」

「姉ちゃんだった。スマホ間違えてたみたいで持って来いって言われた」

「持ってくんだ?」

「金くれるっていうから」

「よっぽど必要なんだ。クリスマスだから?」

「あ……」


そう言えば、朝出る時、なんか気合い入った服着てた。

何だ、あいつ男いるのか……


「澤田は? デートしないの?」

「嫌味かよ」

「え? 文学部の伊藤は?」

「それ、誰が広めてんのか知らないけど、あいつただの幼馴染でなんっでもないから」

「そうなんだ」

「オレ、急ぐからじゃあな!」




久しぶりに電車に乗ると、やたらカップルが多くて、びっくりしたけど、今日がクリスマスだからだということを思い出した。

それで部活も休みになったんだった。

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