第16話 澤田 瞬---side11

月島の相手は、風早の兄貴?


でも風早の態度を見ていると、まるでこいつも……


考えてもわからないことは、聞くしかないよな。


「なぁ……」


風早に声をかけようとして、それをかき消すような紗香の声がした。


「あー! こんなところにいた!」


浴衣姿の紗香が小走りにやって来た。


「瞬、これわたしが作ったクッキー。たくさん作りすぎたからあげるね。カフェでも売ってたんだけど、すっごい評判で、すぐに売り切れちゃったんだから!」

「あ、うん」

「良かったじゃん」


今、どっちに向かって言った?


「風早ひとり? めずらしいじゃん。月島さんは?」


風早がいることに気が付いて、紗香が話しかけた。


「今日はもう帰ったから、オレも帰るとこ」


風早は、なぜかオレに向かって返事をした。でもそんな様子に紗香は気が付いていないようだった。


「じゃあ」


そう言うと、風早は行ってしまった。

窓の外を見ると、月島も風早の兄貴も、もうそこにはいなかった。


「ねぇ、サッカー部の方の手伝い終わったんだったら、一緒にまわらない?」

「なぁ、さっきなんで月島のこと風早に聞いたの?」

「え?」

「何でそういう聞き方すんの?」

「何でって……」

「帰る」

「待って、瞬、どうしちゃったの? らしくないよ?」

「らしくないって何? オレってどんなやつだか知ってんの?」

「瞬……月島さんは、多分、彼氏いるよ」

「それ、風早だと思ってるんだったら」

「違う。相手は大学生じゃない。前に、見たことあるから。着物の人と一緒にいるとこ」

「オレも今日見た」

「ねぇ、瞬」

「バイバイ」



よくわからないモヤモヤとしたものを紗香にぶつけてしまった。

オレは最低だ。

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