第12話 澤田 瞬---side7

学祭が近づいてきて、その準備で居残り組が増えてきた。


教育学部は学科で分かれずに、学部全体でなんかやることになっている。

部活やサークルに入ってるやつが多くて、そっちに時間をかけたいから、学部全体で1個何かをやることにして、1人当たりの準備の負担を減らそうというのが理由らしい。

サッカー部の方は毎年同じで、フランクフルトを売ると決まっているので、準備も慣れている。

それで、学祭の準備も特になくて、普通に部活をやっている。



「瞬!」


部活が終わって、バイクをひいて正門に向かっているところで紗香に呼び止められた。


「何?」

「途中まで一緒に帰ろうよ」

「オレ、バイクだけど」

「いいもの持ってるんだよね! 福福圓のラーメン無料券。一緒に行こうよ」


これで行ったりするから、紗香と付き合ってるんじゃないかとか言われるんだよなぁ……

でも、普通に友達とご飯くらい行くだろ?


「行く!」

「あそこのラーメン好きだったよね」

「醤油豚骨って、部活帰りに最強だよな?」

「だね」


紗香とは映画もだけど、食べ物の趣味も合う。

いっそのことこいつが男だったら良かったのに、と最近は思ってしまう。


「あ、月島さん」


その声で紗香の向いている方を見た。

月島が風早と一緒に帰っているところだった。


「バイバーイ」


紗香が大きな声を出した。

その声で、月島と風早がこちらを向いた。


月島はこっちに向かって軽く頭を下げた。

それでオレも頭を下げた。


風早は、そんなオレを見て、笑った。


「紗香、あんまり話したことないって言ってなかった?」

「あいさつくらいはするよ」


この状況って、また月島に誤解されたんじゃ?

自分の横を歩く紗香を見た。

まさか、紗香のやつ、わざとじゃないよな?

って、こいつがそんなことするわけないか……

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