西川口のゴブリン退治 8

俺たちは、上の階層に着いた。

このフロアは、いくつもの部屋に別れている。全て、店舗だった所だ。

あー、ここ、ウジャウジャ居るわ。

あちこちの部屋から、ゴブリンの気配がする。動き回る音や、息遣い。独自の獣くさい体臭。我々、闖入者の様子を窺っている空気。

部屋を1つずつ調べて行くのは、骨が折れそうだが、仕方ない。

二人で手分けしながら、中を確認する事にした。


「山田、くれぐれも無理するなよ」


「わかってますよ。ヤバくなったら逃げてきますから」


まず、ひとつめ。

胡散臭いマッサージ店。もちろん、営業していない。

扉の向こうに、居るな。気配を感じる。

勢いよくドアを開けると、二匹のゴブリンが、一斉に飛び掛かって来た。


俺は、ひらりと右側にかわし、片方のゴブリンを袈裟けさけに斬りつけると同時に、もう一匹を蹴り飛ばした。

蹴られた弾みで壁に叩きつけられ、動きの停まったゴブリンの首を斬り落とす。

2匹倒すのに、5秒とかかっていない。かなり慣れたな。

ポーションを飲んでいるとはいえ、自分がここまでやれるとは、さっきまで想像もしていなかった。


ゴブリンの死体は、すぐに魔石へと変わった。

俺は、2つの魔石を拾いリュックに仕舞うと、さらに店の奥へ進んだ。


どこもかしこも、ほこりだらけだ。

店内はカーテンで仕切られており、それぞれに診療所のようなベッドが置いてある。

ゴブリンが爪で引っ搔いたのか、どのベッドも切り裂かれているようだ。


姿も見えないし、気配もしない。

この店には、さっきの2匹しか居なかったようだ。


「よし、この店チェック完了」


俺は、廊下に出た。


次は、隣の店。

壊れた看板には、なんとかサロンと店名が書いてある。ここも違法風俗なのだろう。

ドアを半分ほど開いたところで、突然、大きな口のゴブリンの顔が飛び出し、嚙みついて来た。

俺は、左手の籠手こてでゴブリンの牙を受けて、その間に右手の短剣で奴の首を斬り落とす。

流れ作業だ。


ドアを全開にすると、更に2匹のゴブリンが、勢いよく飛び出して噛みついてくる。

俺は、左籠手に喰い付いたままのゴブリンの生首をそいつらの前に突き出した。

狙い通り、一匹のゴブリンが生首に齧りついた。その間に、もう一匹のゴブリンを短剣で倒す。返す刀で、生首にかじりついたゴブリンの首を斬る。

俺の左腕には、生首が2段重ねになってぶら下がった。程無くして、生首も床に転がった死体もちりになって消えた。後には魔石が残った。

一応、この店も奥まで調査する。

ここもカーテンで区切られているが、ベッドではなくソファが置かれている。

暗くて、如何いかにもゴブリンが好みそうな環境だな。

それにしても、1階に居たゴブリン達と違って、いきなり噛みついてくるだな。


廊下に出ると、田中さんと鉢合わせた。


「おう、山田。どうだ?首尾は」


聞けば田中さんは、俺が2店舗確認する間に、5店舗も調べたらしい。さすがだ。

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