西川口のゴブリン退治 5
「うわあ、暗いですねえ」
「ん?ポーション飲んでないのか?」
そうだった。忘れてた。
とうとう飲むのか、あの薬事法もパスしてない怪しげな薬を。
まずは、感覚強化ポーション。ラベルにフクロウのイラストが描かれている。一口飲んだが、美味いものではないな。
お、見える見える。暗いはずなのに、ハッキリと見える。
中は、いかにも廃ビルという感じで、床には弁当のカラや吸い殻、空き缶、コンドームなどのゴミが散乱している。
ネズミの死体もあった。齧られたような跡がある。ゴブリンの食い残しか?
続いて、魔力増強ポーション。これは、体の中にある魔力回路、いわゆる東洋医学で云うところの経絡に流れる「魔力」を意識し増強するという代物。
む。一口飲んだら、体中を隅々まで走る「何か」を感じる。それは、少し意識を凝らせば、容易に流れを変えられるのが分かる。これが、「気」だの「魔力」だのいうモノなのか。これで、この玩具にしか見えない刀も使えるようになるはず...だよな。
魔力の増強に伴い感覚ポーションの効果も強化されたのか、聴力もアップした。
聴こえる。このビルに潜んでいる異形の息遣いが。これがゴブリンか。沢山居るな。すぐ近くにも居るようだ。
加えて、体力増強、敏捷性アップ、反射神経向上、動体視力向上、筋力増強、耐久力向上...など諸々の効果を持つカクテルポーションをグイっと飲み干す。これで完了だ。個別に買い集めるよりもカクテルの方が安くつくのだ。
さて。
ようやく、冒険者らしいお仕事の開始だ。実質的に、これが初仕事だな。
壁の向こうで、こちらの様子を窺っている者が居る。
人間の気配ではない。ビンビンに殺気を感じる。3匹は居るな。
田中さんは、そちらに向かって歩み寄ったかと思うと、勢いよく壁を蹴った。
「ギィ!」
やはり3匹。
6歳児くらいの大きさの生き物が飛び出してきた。
緑色の肌で頭髪は無い。耳と鼻が長く、口からは牙が飛び出している。爪も長い。
これがゴブリンか。
体格差が有り過ぎるため、素手で戦ったとしても力負けする気はしないが、爪や牙は脅威かもしれないな。
3匹のうち1匹は逃げたが、残り2匹は、こちらに立ち向かってきた。手には鉄パイプを持って、武器にしている。廃ビルに落ちていたのだろうか。
小柄な分だけ、ゴブリンは素早い。
しかし、ポーションを飲んでいる俺には、充分、補足できる程度の速さだ。
玩具のような短剣を腰から抜いて、僅かな魔力を流し込み、ゴブリンに向かって斬りつける。
スパン!と勢いよく斬れた。
包丁で豆腐を切ったように、手応えが殆ど無い。これは凄いぞ。玩具のような見た目の短剣。
切り落とされたゴブリンの頭は、コロコロと音を立てて床を転がる。
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