西川口のゴブリン退治 2
その朝、俺と田中さんは西川口を目指すべく、所沢で落ち合った。
所沢駅から西武池袋線に乗り込み 秋津駅で降りて新秋津駅でJR武蔵野線に乗り換え、南浦和から京浜東北線に乗り換えて、西川口を目指すのだ。1時間足らずで着くはずだ。
平日朝の、通勤時間帯である。車両は混んでいた。しかし、我々の周りは人が来ないので、空いていた。
何故かって?
田中さんのせいだ。
例によって、今日も田中さんは冒険者スタイルで電車に乗っている。
裸の上半身に直接、防具を着用している。
防具と言っても、まともに覆っているのは、肩回りくらいだ。
胸には、帯状の防具が襷のように、くっついている。3月にこんな格好で寒くないのは、この防具が寒さを凌ぐ機能を持つからだ。
そして、羽のような飾りが付いた兜を被り、バカでかい剣を背中に担いでいる。
ギリシャ・ローマ時代の、戦士のバッタモンの更に出来損ないというコスプレ姿だ。
目立つなんてもんじゃない。
周りは、通勤途中の会社員や学生たち。田中さんは、浮きまくっている。
皆、彼からは目線を逸らしている。そして、距離を取っている。
無理もない。これなら、まだヤクザの隣に立つ方がマシだろう。
俺の方は、もう慣れたせいか、こんな恰好のオヤジの横に居る事に、特に抵抗も無くなった。
メンタルって鍛えられるものなんだな。
むしろ、田中さんの伸びっぱなしのアゴヒゲや、乳首から一本だけ伸びてる太くて長い毛の方が、気になる。
気にするポイントがオカシイというのは、自分でも承知しているのだが。
今日の田中さんはなぜか大きなクーラーボックスを持っている。
何だろう、要冷蔵のポーションでも入っているのだろうか。
そうこうしているうちに、我々は秋津駅に到着した。
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