西川口のゴブリン退治 1
魔物を倒した時に得られる魔石からは、物凄いエネルギーが取り出せるらしい。その気になれば、それだけで発電所が作れるほどだとか。
田中さんの収集した魔石は、目の玉が飛び出る程の金額で、ギルドに買い取られた。
しかも田中さんは、俺と共同でクエスト完了させたとギルドに報告し、俺に分け前が来るよう計らってくれた。
...俺なんて、ただ熊の前でビビッてしゃがみこんでただけなのに。脱糞までしたのに。
そもそも秩父で田中さんと遭遇した時、既に魔石の回収は終わっていたのに。
田中さん曰く、驚かせてしまったお詫びだそうだ。
そうだった。目の前で散弾銃を発射されて、ひとつ間違えば死ぬところだったのだ。遠慮なく分け前は貰っておこう。
何はともあれ、俺は最初のクエストをクリアーできたので、Eランクに昇格できた。
今度の身分証は、写真入りのプラスチックカード。なんか、金色のキラキラした平べったいのが貼ってある。ICチップだろうか。
田中さんによると、冒険者の身分証は、いずれマイナンバーカードと一本化される予定だとか。保険証と一緒か。
こうして見ると、紙でできたFランクの身分証は、やはり仮証明書みたいなもんなのだなあ。
そして今、俺たちは所沢の冒険者ギルドに来て、依頼の貼られた掲示板を見ている。
Cランクに昇格した田中さんは俺のメンターになり、2人だけで結成されたパーティーの初仕事を選ぶのだ。
それにしても、今日は依頼のビラが多い気がする。
需要と供給の関係だろうか。現在の冒険者ギルドは、群馬で出現したダンジョンに、かなりの人手を取られている。そればかりか、群馬ダンジョンで、かなり死傷者が出ているらしい。さらに、最近は静岡でダンジョンが発生したとの報告があった。このダンジョンを何とかしないと、リニア新幹線のトンネルが掘れないそうなので、こちらにも大勢の冒険者が駆り出されている。
要するに、ここのギルドは、ほとんどの冒険者が留守にしている状態なのだ。したがって、依頼は選び放題。俺にとってはありがたい状況だ。
「山田、この依頼は、どうだ?」
田中さんが指差したビラは、西川口の廃ビルでゴブリン駆除のクエストだった。不動産業者からの依頼だ。
秩父みたいな山奥なら魔物が出るのも分かるが、西川口?そんな街中に魔物が出るものなのか?
田中さんは、よくあるスズメバチ駆除の依頼よりはゴブリン駆除の方が好きだそうだ。それに、俺の教育というか研修に、うってつけだと判断したらしい。
このクエストは、内部の様子を詳細に調べる事がメインの目的なので、駆除を完了しなくても良いと書いてある。
もちろん、完全に駆除できるなら、それでも良し。その場合は報酬額が跳ね上がる。なるほど。
なんにしても、住み着いてしまったゴブリンを排除しなければ、ビルを売る事も貸す事も取り壊す事も出来ない。
不動産業者としては、死活問題だろう。前述の、リニア新幹線の問題を連想してしまう。
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