最初のクエスト2

バスを降りると、現場は、想像していたよりも山奥だった。

空気が美味い。


依頼主の新井さんは親切な人で、仕事の内容を分かりやすく教えてくれた。

高齢で足腰が弱くなった新井さんに代わって、様々な力仕事をするのが、メインだ。

最近の農業は、かなり機械化されているのだが、どうしても人の手が必要な作業も多い。

そんな作業を新井さんの指示で、いくつかこなすのが今回のクエスト。


3月だから大した作業は無いだろうと思っていたが、甘かった。

主にビニールハウスでの作業が多い。

ハウス栽培のイチゴの収穫などで、しゃがんだり立ったりを繰り返すと、膝が笑う。

体力には自信がある方なのだが、不慣れな作業の連続だからだ。


続いて、農作物を軽トラに載せて、新井さんの運転で直売所などに納品する。

荷物の上げ下ろしは、俺が担当する。

これも、けっこう疲れる作業だ。


ギルドのコンビニで買ったポーションを飲めば、こんな作業は屁でもないのだろうが、ポーションは体に悪そうだからな。

なにせ薬事法をクリアしてないし、そもそも治験を行っているかも怪しい。

まあ、命の危険があるようなクエストであれば飲むが、農作業程度で使うようなものでもない。

高いし。

せっかくポーションを持ってきたけど、今日のところは温存しとこう。

武器も防具も持参したのだが、考えてみれば必要無かったな。農作業だし。

田中さんのアドバイスを真に受けすぎたかもしれないな。


軽トラでの納品が終わり、我々は農場へ帰ってきた。

新井さんから器具の片付けを指示されて、俺は一人で畑へ行った。


黙々と作業を続け、ふっと顔を上げると、気が付いた。


10メートルほど先に、熊が居る。


しかも、こっちを見ている。

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