Dランク冒険者 田中さん 1

 それはそれとして、最初に受けるクエストを決めなきゃならない。


 クエスト依頼の一覧は...と。

 ああ、あそこの掲示板か。

 普通にハローワーク向けの求人票の掲示板と並べて掲示されている。


 ええと、Eランクでも受けられる依頼は、スズメバチ駆除、アライグマ駆除、それから...何?熊退治!?あ、これは麻酔銃を使うから、冒険者資格の他に、猟銃の免許と獣医師資格が必要...。無理じゃん。

 あとは...。報酬額は少ないけど、土木作業や農作業、薬草の最終。冒険者って、要するに便利屋みたいなものだったの?


 悩んでいると、後ろに人の気配を感じたので、なんとなく振り向いてみた。そこには、50代半ばと思われる、やたらと体格ガタイの良いオヤジが立っていた。まるでプロレスラーのようだ。

 そのオヤジは、俺と同じように、クエスト依頼の掲示板を眺めていた。きっと冒険者なのだろう。

 いや、冒険者に違いない。

 それしか考えられない。


 何故って?

 その外見だ。いや、体格が良いからだけではない。

 まず、鎧と云うか防具と云うか、そんな物を着用している。この寒いのに裸の上半身に直接、防具を付けている。

 身体を覆う面積の少ない防具だ。こんなの、役に立つのか?

頭には、兜?というか、金属製のハチマキという感じの防具を被っている。

このハチマキの左右には翼を模した飾りが付いている。

 やはり、顔も頭部も大部分が剥き出しになっているため、こんなので攻撃を防げるのか極めて疑わしい。実用性よりも、ファッション重視か?

 そして、やたらとでかい剣を鞘に納め、背中に担いでいる。


 要するに、RPGでよく見るような冒険者の恰好をしているのだ。

 もちろん、ハローワークに似つかわしくない。浮いていた。

 事情を知らなければ、ただコスプレしてるだけのヤバい人だろう。

 この格好のまま、ここに来たのか?

 この格好で、電車に乗って来たのか?


 周りの人達からは、ジロジロと見られている。無理もない。

 俺も、じっと見つめていた。目が離せなかったのだ。


 あ、目が合った。


「ん、新人?依頼を探しているのかな?」


 うわあ、話しかけられちゃったよ。

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