冒険者ギルド登録 2

窓口で対応した職員は、スーツ姿の若い女性だった。

俺が予め用意してきた書類に、職員の女性は、ひと通り目を通して確認した。


「...それで、えーと、ソロで活動の予定で、よろしいですね?

 パーティーを組むと、報酬の配分など複雑になりますから、追加で手続きが必要になります。

 それから、パーティーが法人登録されますと、そちらにまとめて振り込まれるようになりますから」


 色々と面倒くさそうだな。


「手続き終了後、3日後に祝い金と準備金を合わせた30万円が、書類に記入して頂いた口座に振り込まれます。今後、発生する報酬も、同じ口座への振込になります。30万のうち25万円は月々返済していただく事になりますが、5万円は祝い金ですので、返済不要です」


 親切に説明してくれる女性職員。それにしても、冒険者ギルド担当者の事務スペースは、他の窓口に比べると、少々手狭な感じがする。

 冒険者ギルドの業務は、ハローワーク全体における比率が、かなり低いのだろうか。


 俺は、女性職員から渡された名刺大の書類に、言われるままにサインした。

プリンターで打ち出したと思しき、質素な書類。

 女性職員が、それを装置に通すと、名刺大の書類はパウチされ再び排出された。


「これが、Fランク冒険者の身分証明書です。クエストを受ける際は、必ず持参してください。東京都と埼玉県内での依頼を受けられます。

 ひとつでもクエスト達成するとEランクに昇格しますので、その時は新しい身分証を発行しますからね」


 なるほど。ほんの短期間だけの身分証か。仮の身分証のような物だから、質素なつくりになっているのだな。


「では最後に、この誓約書に署名捺印をお願いします」


 クエストの最中に命を落とす事になっても、一切文句を言わないという内容の誓約書だ。

 冒険者は、危険と隣り合わせの職業だからな。さすがに気持ちが引き締まる。そういえば、冒険者は生命保険への加入を断られると聞いた事がある。

 書類に、丁寧に名前を書いて判子を捺し、職員に渡した。


「それでは、これで手続きは全て終了となります。お疲れさまでした」


そう言うと、女性職員は、分厚い冊子を渡して来た。


「これが、マニュアルです。差し上げますから、読んでおいてくださいね。

このページにQRコードとURLが載っていますが、ここからスマホに、冒険者専用アプリをインストールできます。登録していただくと、ギルドからの連絡やクエストの依頼などが閲覧できるので、便利ですよ。年に一度、無料で行える健康診断のご案内も、アプリを通じてお送りしますので、ご利用下さいね。あと、メンター制度がありまして、新人への教育を熟練ベテラン冒険者から受ける事ができます。こちらも無料になります。

 それから、冒険者は個人事業主になりますので、年度末には確定申告する必要があるので、宜しくお願いします。

 確定申告に関しては、税務署が管轄なので、そちらで詳しく説明聞いてください。

 帳簿は、きちんとつけて。望むなら青色申告してください」


 この後、税務署にも行かなきゃならないのか。

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