#79 お泊り







 早くも三学期の終業式を迎えた日の翌日、僕は今最寄り駅に向けて歩みを進めている。

 昨日の終業式では、二年生を「無事に」終えられたことに対する色々な感情が胸の中に溢れた。

 沢山のことがあった二年生のクラスだが、なんだかんだ「悪くなかった」と僕は思っている。

 球技大会の後も坂本くんたちと話すということはなかったが、彼らからの睨みつけるような視線はほとんどなくなり、「折り合い」が付いたように感じたのも「悪くなかった」と思える一因であるかもしれない。

 三年生のクラスはどうなるか分からないが、次はもっと積極的にクラスと関わって行こうと思いつつ、僕は四月を期待して待つことにした。


 そうして僕は、最寄り駅の改札前に到着した。


 時間を見ると、後数分で待ち人が乗る電車が到着しそうである。

 その待ち人というのは、ひまちゃんのことだ。


 今日から三日間、ひまちゃんは僕の家にお泊りをしにやってくる。


 というのも、つい十日ほど前、ひまちゃんは志望校に無事「合格」を果たした。


 このお泊りは、ひまちゃんの「合格祝い」も兼ねている。

 高校に合格したらこっちに遊びに来たいとひまちゃんが言っていたので、こうしてお泊りが実現したというわけである。

 ちなみに、どうしてひまちゃんが電車で来るかというと、高校は電車通学となるため、その予行練習だそうだ。

 今までは徒歩での通学しかしてこなかったため、「挑戦したい!」というひまちゃんの意思を尊重し、今回は進さんと日奈子さんの二人はおらず、完全にひまちゃん一人の移動とお泊りだ。

 ひまちゃんはしっかりとした女の子なので、乗る電車や時間を間違えたりするなどの心配はしていないが、それでもちゃんと到着できるのか僕はソワソワとしてしまう。

 ひまちゃんのことになると過保護気味になってしまうのは僕の悪い癖?だが、可愛い妹を心配するのが悪いということもないだろうと自分に言い聞かせ、僕はその到着を心待ちにした。




 そうして数分後、改札の向こう側にひまちゃんが姿を現した。

 ひまちゃんも僕の姿を発見し、嬉しそうな顔を浮かべながら僕の元へと駆け寄ってくる。

 そのままひまちゃんは僕の胸に飛び込んできた。


「お兄ちゃん!」


 最近は出会うたびにひまちゃんはこうして僕に抱き着いてきてくれる。

 そんな様子を可愛らしく思いながら、「ひまちゃん、おはよう」と僕は声を掛けた。


「移動お疲れさま。ひまちゃんの荷物もあるし、一回家に行こっか」


「うん!」


 僕はひまちゃんのキャリーケースを持ち、そのままひまちゃんの横に並んでゆっくり歩き始める。

 すると、ひまちゃんが僕の空いている方の手を握ってきたので、僕もその手を握り返した。

 「えへへ♪」とひまちゃんが楽しそうな笑顔を浮かべているのを見て、僕も何だか嬉しくなる。

 そして僕は、会ったら言おうと思っていた言葉をひまちゃんに伝えた。


「ひまちゃん、改めて卒業と合格おめでとう」


 僕がそう言うと、ひまちゃんは「ありがとう!」と達成感を感じさせる晴れ晴れとした笑顔を見せてくれた。




 そこからは受験当日の話を聞いたりしながら、二人で仲良く家へと向かうのだった。










***










 ひまちゃんがこっちに泊まりに来て二日目、今日は愛野さんと南さんの二人と一緒に四人でお出掛けをする予定だ。

 元々ひまちゃんと愛野さんの二人で予定を立てていたそうだが、ひまちゃんが南さんにも会いたい!となったことで三人となり、何故か僕の参加も決まって四人になったという感じだ。

 何やら今日のお出掛けの目的は「僕に関わること」らしいのだが、その目的は当日のお楽しみということで、ひまちゃんからは教えてもらえなかった。

 何だろう?と楽しみにもしつつ、僕とひまちゃんは昨日と同じように最寄り駅へと向かい、やって来た電車へと乗り込んだ。


 今日の目的地は、ひまちゃんの誕生日プレゼントを買う際に進さんと訪れたショッピングセンターである。


 電車は愛野さんたちと時間を合わせたこともあり、サッと車内を見渡してみると、すぐに四人席に座っている二人を見つけることができた。

 そのままひまちゃんと一緒にその席へと移動し、二人に挨拶をしながら腰を下ろす。


「愛野さん、南さんおはよう」


「川瀬おはようっ!」


「川瀬くんおはよーっ」


 僕が挨拶をした後、ひまちゃんもそれに続くようにまずは愛野さんへと挨拶を行った。


「お姉ちゃん久しぶり!」


「日葵ちゃん久しぶりっ!中学卒業と高校の合格、どっちも本当におめでとうっ!」


「お姉ちゃんありがとう!」


 そうして愛野さんへの挨拶後、ひまちゃんは南さんの方を向き、


「初めまして!水本日葵です!」


 とにこやかに初めましての挨拶を行った。


 …それを受けた南さんは、何故か俯いてぷるぷると震え始めた。


 そして、勢いよく顔を上げた後、南さんはひまちゃんにこう言った。


「か、可愛過ぎるっ!!」


 そのまま南さんはふんすふんすと興奮した様子で、ひまちゃんがいかに「可愛い」のかを褒め称え始めた。

 いつもの愛野さんなら「朱莉ってば」と南さんの暴走を止めているところだが、何故か愛野さんもまた、うんうんとドヤ顔を浮かべながら南さんの言葉に頷いている。

 かくいう僕も「間違いない」と南さんの言葉に肯定を示しているため、


「もぉー三人とも恥ずかしぃよぉっ!」


 と、ひまちゃんは僕たち三人の反応に顔を真っ赤にさせていた。

 そんなひまちゃんの恥ずかしがる様子を見た愛野さんと南さんは、


「「可愛い~っ!」」


 と更にひまちゃんを愛でる様子をヒートアップさせており、結局電車が目的の駅に到着するまでの間、ひまちゃんは「お姉さんたち」に可愛がられるのであった___。










 電車から降りた僕たち四人は、そのまま駅前のショッピングセンターを目指して歩いていく。

 ひまちゃんは南さんのことを「朱莉ちゃん」、南さんはひまちゃんのことを「日葵ちゃん」と呼ぶようになり、今も前で二人は楽しそうに会話をしている。

 南さんが冗談交じりに「ボクも『お姉ちゃん』って呼んで欲しいよぉ~っ!」と言っていたのは面白かった出来事の一つだが、ひまちゃんには呼び方の線引きみたいなものがあるのかもしれない。

 愛野さんがそんな南さんに「ふふんっ」と勝ち誇った顔を浮かべ、「ぐぬぬ…っ」と南さんが言っていたやり取りを見て、僕とひまちゃんは楽しく笑った。


 まだお出掛けは始まったばかりだが、「なんかこういうのって良いなぁ」と思っていると、隣を歩く愛野さんが声を掛けてくる。


「今日はいっぱい楽しもうねっ♪」


 そんな愛野さんの言葉に、僕は「うん、そうだね」と笑顔を返した。


 今日は沢山「楽しい」思い出が作れそうな、そんな気がしている___。




 ショッピングセンターに到着した後、入り口の一角に移動した僕たちは、ひまちゃんから今日の目的について話を聞くことになった。


 満を持してひまちゃんが言ったその目的とは___、


「今日はお兄ちゃんの服をみんなで選ぼうと思います!」


___どうやら僕の服を買うことだった。


 そのままひまちゃんが話すのを聞くと、病院にいる僕のために服を持っていこうとした時、僕の服がほとんど同じで、しかも数着しかないことにひまちゃんと日奈子さんは気付いたらしい。

 それを見た二人は、


「「もっとお兄ちゃん(朔くん)にはオシャレをして欲しい」」


 と意見を一致させたとのことだ。

 そう言えば、二月に向こうの家に帰った時、


「そろそろ新しい服が必要になってくる季節ね」


 と日奈子さんが話してきたことを思い出す。

 あれは、日奈子さんからの匂わせ発言だったということなのだろう。

 今月はひまちゃんがこっちに泊まりにきていることや、ひまちゃんの入学準備などで忙しくなることも考慮し、僕は向こうに帰らない旨を伝えている。


 そのため日奈子さんはいないが、今日がその「オシャレ計画」の実行日となったというわけだ。


「お母さんから『軍資金』ももらってきたよ!」


 「軍資金」というのは、僕の服代のことだろう、ひまちゃんは自分のとは別の財布を「じゃじゃーん」という効果音が付きそうな勢いでカバンから取り出しており、僕は用意の周到さに思わず苦笑してしまう。


「ということで、今から『お兄ちゃんオシャレ大作戦』を決行します!お姉ちゃんと朱莉ちゃんも協力よろしく!」


 ひまちゃんが二人にそう言うと、


「もちろんっ!!」


「任せてよーっ!」


 と二人は頷いていた。

 特に、愛野さんは僕の服選びに気合い十分な様子である。

 確かに二人はファッションの知識が豊富であるため、これ以上ないほどの適任者であろう。

 ただ、愛野さんが「どんな服を着てもらおうかな」というようなキラキラ、というかギラギラとした視線を向けてきているので、僕の体力は持つのかな…というただ一点が不安なところである。


「…お手柔らかによろしくね」


 そうは言ってみたものの、着せ替え人形になりそうだなぁとも思いつつ、僕たちは作戦を開始させた。










 作戦開始後、そこからは案の定「戦場」だった。

 愛野さんだけでなく、ひまちゃんも気合いが入った様子で、次々に服を選んできては僕に渡し、そのまま試着をするように伝えてくる。

 それを色々な服屋で繰り返しながら、ああでもないこうでもないと試行錯誤を重ね、少しずつ僕の服が一着、また一着と決められていく。

 繰り返し試着をするのも大変だが、それよりも試着をするたびに愛野さんとひまちゃんが僕のことを褒めてくることに、良い意味で一番疲れを感じていた。

 「恥ずかし疲れ」とでも言うのが適切だろうか、毎回褒められるたびに恥ずかしさでこそばゆくなるのである。

 ただ、二人が本当に楽しそうな表情を浮かべながら服を選んで褒めてくれるので、僕には我慢をするという選択肢しか残されていない。

 南さんは、そんな僕の様子を見ながらお腹を抱えて笑っていた。




 そうしてまた別のお店へと移動をし、キャッキャと盛り上がりながら服を選んでくれている愛野さんとひまちゃんを遠目に眺めていると、南さんが声を掛けてくる。


「にゃははっ、お疲れのようだねーっ」


「…気疲れがすごいよ」


「姫花と日葵ちゃんの勢いを見たら無理もないよね~あははっ!」


「母さんと服を買いに行った時も中々だったけど、今日はそれ以上かも…うん、絶対にそう」


「二人とも川瀬くんに『これ着て欲しい!』っていう気持ちが強過ぎるからねー。もちろんボクも楽しんで選んでる側だから人のことは言えないけど」


 僕が「とほほ…」という感じでため息をはいていると、


「でもでも、意外と内心では嬉しいでしょー?」


 と南さんがニマニマとしながら僕にそう聞いてくる。


「そりゃあまぁ…嬉しいけど」


 愛野さん、南さん、ひまちゃん、どこにいても一際目を引くような美少女が、僕のために服を選んでくれているのだ…嬉しくないはずがない。

 それに、三人が楽しそうな笑顔を浮かべていると、僕もつられて楽しくなってしまう。

 こんな楽しいことは、これまでの僕には想像もできなかった。


 だから僕は、こうして大切な人たちと一つの時間を楽しく共有できていることが、とても嬉しかった。


 そんな嬉しさで笑顔を浮かべていると、


「朱莉ーっ、これとかどう思うーっ?川瀬もこっちに来てーっ」


 と、少し遠くから僕たちを呼ぶ愛野さんの声が聞こえてきた。


「はいはーい、今行くよーっ」


 南さんは愛野さんにそう答え、


「それじゃあ川瀬くん、まだまだ試着がんばろうねっ?」


 と僕に茶目っ気のある笑みを向けてくる。


 そうして僕は、ここからまだまだ続きそうな服選びに「よしっ」と気合いを入れ、南さんと共に二人の元へと移動をするのだった。










 お昼ごはんを食べた後もしばらく服選びが続き、ようやく服を買い揃えることができた。

 三人は「やりきった」という満足げな表情を浮かべており、僕もなんだかんだ新しい服にテンションが上がっている。

 予算内でこれだけオシャレな服やズボンを沢山買うことができたのは、やはり愛野さんや南さんの力が大きいのだろう。

 今日の服選びを経て、二人のファッションに対する情熱をこれでもかと感じることができた。


「三人ともありがとう!」


 僕は作戦を成功に導いてくれた三人に、感謝の言葉を伝える。


 こうして、オシャレ大作戦は大満足で終わった___。










***










 服選びが終わった後は、みんなでゲームセンターエリアにやってきた。

 というのも、みんなでプリクラを撮ろうということになったからである。


 以前に愛野さんと出掛けた時、僕は愛野さんからのプリクラの提案に渋った様子を見せたことがあった。

 愛野さんはそのことを覚えていたようで、


「川瀬が嫌ならやめておくけど…」


 と、僕を気遣ってくれていた。

 しかし、前はそれで愛野さんに寂しそうな顔をさせてしまった。

 なので僕は、


「僕はプリクラを撮ったことないから、愛野さん教えてもらっても良い?」


 と愛野さんにそう伝えた。

 その意味がちゃんと伝わったのだろう、


「…うんっ!一緒に撮ろっ♪」


 と愛野さんは嬉しそうな表情を浮かべた。


 そうして僕たち四人は、プリ機の中へと足を進める。


 中は明る過ぎるほどの白いライトで照らし出され、前には大きな画面が表示されている。

 僕がキョロキョロとしていると、南さんが慣れた手つきで画面を操作しているのが目に入り、そのまま撮影の時間が始まった。

 僕の前にはひまちゃんと南さん、隣には愛野さんがおり、前の画面からポーズの指示が聞こえてくる。

 分からないポーズは愛野さんに教えてもらいながら、一つずつ撮影を重ねていく。

 三人は楽しそうにしているが、僕は付いていくのに必死であるため、後で自分の顔を確認することに今から身悶えしそうになる。


 そうして最後の撮影となり、画面からは「抱き締め合って」という指示が出される。

 僕がその指示に「えっ!?」と驚いていると、前にいたひまちゃんと南さんは、僕と愛野さんを残してそのままプリ機の外へと出て行く。

 二人の顔は、今日何度か目にしたニマニマとした笑顔だった。

 どうしようと思っている間も、撮影のカウントは「5!4!…」と進み続ける。

 とりあえず、無難なポーズで乗り切ろうと愛野さんに伝えようと決め、僕は隣に体を向けた。


 その瞬間、愛野さんが顔を真っ赤にさせながら僕に抱き着いてきた。


「愛野さん!?」


 そのまま愛野さんから向けられた上目遣いの威力は絶大で、僕は一瞬で顔が熱くなった。

 恐らく僕も、愛野さんと同じように顔を真っ赤にさせているだろう。


 そうしていると、前からシャッター音が鳴り、プリクラの撮影は終わりを告げた。


 撮影が終わった後も愛野さんは僕に抱き着いたままなので、


「あの…愛野さん、撮影終わったよ…?」


 と愛野さんに告げると、


「…えっ!?ご、ごめんっ!」


 と言いながら愛野さんは僕からバッと離れ、顔を両手で隠しながらプリ機の外へと出て行った。


 愛野さんが抱き着いてくるのをやめた時、少し残念に思ってしまう僕がいた。


 僕もプリ機の外に出ると、ひまちゃんと南さんがやっぱりニマニマと口元を緩ませながら僕のことを出迎えてくれた。

 愛野さんは二人の隣で恥ずかしがっているままであり、


「何かあったのかなぁ~?」


「お兄ちゃん~?」


 と僕は二人に追及され始める。

 そのまま二人は隣の落書きスペースへと移動し、今撮った写真を確認し始めた。

 すると、そのスペースから二人の「キャー」という黄色い声が上がり始め、僕は愛野さんとの写真が見られたのだと気付き、今日一番の恥ずかしさを味わう。


 僕と愛野さんが恥ずかしさで身悶えし、使い物にならなくなっていたので、ひまちゃんと南さんが写真の選択や落書きを済ませてくれた。


 写真がプリントされた後、二人揃ってもじもじとしている僕たちに、南さんがその写真を渡してくれた。

 その写真を見てみると、加工で盛れている、いや盛れ過ぎている自分の姿が目に入り、僕は「ぷっ…あははっ!」と笑い声を上げた。

 ほとんど全部の写真が緊張やら恥ずかしさやらで固まった顔になっている自分の顔が、あまりにも面白かったからだ。

 ツボに入ってしまった僕につられ、愛野さんも「ふふっ…」と堪え切れずに笑い声を上げ始める。


 そのまま僕と愛野さんは、プリクラの写真をあれこれ楽しく言い交わす。

 ひまちゃんと南さんもそこに加わり、僕たち四人はプリ機の前で笑い合った。


 恥ずかしさはもちろんあるが、それ以上に「楽しい」という気持ちが胸の中でいっぱいに広がる。


 この四人でプリクラが撮れて、本当に良かった。




 帰ったら今日の思い出に飾っておこうかなと思いながら、僕はこの「特別な時間」を全身で噛み締めるのだった。










***










 今日一日の出来事を振り返りながら、僕は自分のベッドに横になる。

 今はお風呂や歯磨きを済ませて自分の部屋にいるのだが、今日は遊び疲れたので、少し早いがもう眠ろうかと思っているところだ。


 プリクラの後も四人で色々な時間を過ごし、夜ごはんも一緒に食べて二人とは解散をした。


 本当に最後の最後まで笑顔の絶えない、とても楽しい一日だった。


 今度もまた四人でどこかに遊びに行こうという約束もしたので、今からその日が楽しみである。


 そんなことを思っていると、「コンコン」と部屋の扉がノックされる。

 「どうぞ」と声を掛けると、ひまちゃんが僕の部屋の中に入ってきた。


「お兄ちゃん、今日も一緒に寝ても良い?」


 そうしてひまちゃんが首を傾げてくるので、僕は「良いよ」と頷きを返し、端に詰めてひまちゃんの分のスペースを空ける。

 一階の和室に布団を敷いてはいるのだが、ひまちゃんは昨日に引き続き、今日も僕のベッドで寝るつもりのようだ。

 僕がスペースを空けた後、「えへへ♪」と嬉しそうな声を出しながらひまちゃんが僕の隣に寝転んでくる。

 二人並んで横になっているため窮屈さはもちろんあるが、昔は何度もこうして一緒に寝ていたので、むしろ僕は安心感を覚える。


「お兄ちゃん、今日は楽しかったね♪」


「うん、そうだね。本当に楽しかった」


「久しぶりにお姉ちゃんにも会えたし、朱莉ちゃんとも仲良くなれて本当に良かった!」


「また四人でお出掛けする約束もしたし、今から楽しみだね、ひまちゃん」


「うん♪」


 そこからは、二人で今日の思い出を話し合う。


 愛野さんのこと、南さんのこと、服選びのこと、お昼ごはんのこと、プリクラのこと…。


 一つ一つの思い出を味わうように、僕たちは夢中になって会話を続けた。


 そうしてしばらく経った後、「ふぁ」とひまちゃんがあくびをしたので、僕は「そろそろ寝よっか」とひまちゃんに声を掛けた。

 それに「はぁい」とひまちゃんは今にも眠りそうな返事をしてくる。

 そして僕は、


「ひまちゃん、おやすみ」


 と優しくひまちゃんに伝えた。


「おにぃちゃんおやすみなさぃ」


 そして、横からはすぐに「すーすー」と可愛らしい寝息が聞こえ始めた。


 ひまちゃんが眠るのを見届けた後、僕もゆっくりと目を瞑ってそのまま眠りにつこうとする。

 すぐに意識が夢の世界に向かおうとするのを感じながら、僕はその心地良い感覚に身を任せた。


 今日は、良い夢を見ることができそうだ。




 そうして僕は、確かな充足感を覚えながら幸せな気持ちで眠るのだった___。






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