#77 バレンタインデー
冬の寒さが少しずつ落ち着きを見せ始めている二月の半ば、今日も相変わらず自転車に乗って登校をしてきた僕の目に、正面玄関の賑わいが映り込んでくる。
この時間からあんなに生徒がいるのは珍しいが、そう言えば去年も同じような光景を目にしたことを僕は思い出す。
あの時は何かあるのかなと思っていたが、僕はどうしてみんながあんなに盛り上がっているのか、今回はその理由に見当が付いていた。
今日は、二月十四日、バレンタインデーだ。
正面玄関の喧騒を抜けて教室に向かうと、教室の中には三人の女子がいた。
三人のうち二人は同じクラスの女子であり、その二人が別クラスの女子を何やら応援している。
僕は自分の席に腰を下ろした後、前の方で何やら話しているその三人に意識を向けた。
「大丈夫!絶対うまくいくよ!」
「そうそう!私から見ても二人は脈ありだもん!」
「…うん!頑張ってみる!」
そうして二人から応援をされた別クラスの女子は、ある男子の机の中に手紙を入れた。
状況から察するに、別クラスの女子はその机の男子に想いを寄せていて、その気持ちを今日伝えるつもりなのだろう。
その女子の手にはラッピングされたチョコらしきものが見えており、恐らく「本命チョコ」というやつに違いない。
そのまま三人はキャッキャと声を弾ませながら、この教室の外へと出て行った。
そんな光景を目にした僕の胸には、不思議な感覚が広がり始めている。
これが「青春」という感覚なのかな?
あの女子のことはよく知らないが、「うまくいくと良いなぁ」なんて勝手に応援する思いを抱きつつ、僕はその「青春」の味を胸の奥で噛み締めてみることにした。
それは、何とも甘酸っぱくて、爽やかなものだった。
しばらくすると、続々と教室に生徒たちが集まり始め、ソワソワとした男子たちの様子が目に入ってくる。
女子たちは男子の様子を知ってか知らずか、女子の内でチョコの交換を始めており、更に男子たちの期待を高めているように見えた。
女子たちが「友チョコ」を渡し合っている様子をキョロキョロと眺めている男子たちに苦笑しつつ、今日の授業範囲を見直していると、
「はじめー、おはよー」
と元山さんが声を掛けてきた。
「おはよう、元山さん」
元山さんに挨拶を返すと、「ほいっ」と言いながら元山さんがチョコを僕に渡してくる。
それは、黒い雷マークで有名なザクザク食感のチョコであった。
「ありがとう」
「それ、友チョコだからね。勘違いしちゃ駄目だぞー?」
僕が感謝を伝えると、元山さんがそう言いながら揶揄ってくるので、
「井村くんに目を付けられるのはごめんだからね」
と返しながら、僕は肩を竦めた。
そこでふと、元山さんのこともちょっとだけ揶揄ってみようかなという気になった僕は、
「井村くんにはもうチョコは渡したの?」
と、あえて二人のことを追及してみることにした。
元山さんのことなので、いつもみたいに反撃してくるのかと思っていたのだが、
「えっ、まぁ、その…うんっ」
と照れた様子で元山さんは僕の言葉に肯定を示した。
普段とは違う元山さんの様子に目を丸くしたが、井村くんとはうまくいっているようで僕は何だかほっこりとした。
そうして視線を元山さんに向けていると、
「…は、はじめっ!今うちのこと『井村くんと仲良いね』みたいな生温かい目で見てたでしょ!?」
と元山さんは恥ずかしそうにしながら、僕に照れ隠しの抗議の視線を向けてきた。
そんな視線を「そんなことないよ?」と言いながら躱していると、愛野さんが教室に入ってきたので、僕は逃げるようにして席から立ち上がり、愛野さんの方へと向かった。
「愛野さん、おはよう」
「川瀬、おはようっ!」
愛野さんと朝の挨拶を交わした後、愛野さんが珍しく登校時間ギリギリに教室に入ってきた理由を尋ねると、どうやら正面玄関でみんなとチョコの交換をしていたようだ。
愛野さんの机には紙袋が引っ掛けられており、あの中身は恐らくみんなからもらったチョコなのだろう…僕は愛野さんが学校の人気者であるという事実を再認識させられる。
すると、話をしてくれていた愛野さんの視線が僕の手の方に向き、愛野さんは「ねぇ川瀬っ」と僕にこう尋ねてきた。
「そのチョコって誰かからもらったの?」
愛野さんが言う「そのチョコ」とは、ついさっき元山さんがくれたチョコのことだった。
席を離れる時にそのまま手に持っていたようで、僕はそのチョコを愛野さんに見せながら、
「ちょうど今さっき元山さんがくれたんだ」
と説明を行った。
そんな僕の言葉を聞いた愛野さんは、「ふーん」と少しだけ面白くなさそうな、そんな表情を一瞬浮かべた。
何か悪いことでもしてしまったかな?と思ったところで、四宮先生が教室の中へと入ってきた。
「川瀬、また後でねっ」
席に戻る時の愛野さんは「いつも通り」の様子だったので、
(気のせいだったのかな?)
と僕は思うことにした。
そうして自分の席に座り、前で今日の連絡をし始める四宮先生に僕は視線を向けた。
そのため、愛野さんが僕の方を見ていることには気付かなかった___。
午前中の授業が終わり、僕と愛野さんと南さんの三人はいつものように食堂で昼ごはんを食べ始める。
「はい、川瀬くん」
そうしてごはんを食べていると、南さんが僕にラッピングされたチョコチップクッキーを渡してくれた。
「ありがとう、南さん」
「どういたしましてーっ」
クッキーを受け取る時、「『後で』食べてね」と南さんに言われたので、僕はそのクッキーを大事にポケットへしまい込んだ。
「川瀬くんは他にもチョコとかもらったのー?」
そして、南さんは興味本位と言った様子で僕にそう尋ねてきた。
特に隠すことでもないので、僕は元山さんにチョコをもらったことを伝えた。
「同じクラスの人からもらったよ」
すると、南さんは「なるほどね~っ」と言いながら何やら楽しそうな表情を浮かべ始める。
そうして、そのまま愛野さんへとその表情を向ける南さん。
「な、何っ?」
「いや~?べっつに~?ただ姫花のことが可愛いなーって思っただけっ」
愛野さんは南さんに少しムッとした顔を向けているが、その頬は赤く染まっている。
南さんが僕にチョコをもらったかどうかを聞いてきた今もそうだが、今日は何回か愛野さんがムッとする瞬間があるのだ。
どうやら南さんはその理由に気付いているようであり、こうしてニヤニヤとした顔を浮かべているのだろう。
僕も「もしかして…」という理由があるにはあるが、まだ確信には至っていないため、それを指摘することはしないでおく。
そうしてごはんを食べ終わるまで、愛野さんの頬は赤いままだった。
***
学校が放課後を迎え、さて帰ろうかと思っていると、
「…川瀬っ」
と愛野さんが声を掛けてきた。
「どうしたの?」と返事をすると、
「ちょっとだけ学校に残ってもらうことってできる?」
と、愛野さんが僕にそんなお願いをしてきた。
今日はアルバイトもなく時間に余裕があるため、「残れるよ」と頷くと、愛野さんは嬉しそうな顔を浮かべ、
「それじゃあ二十分後くらいにまたこの教室で!」
と言い残し、教室の外へと出て行った。
授業の休憩時間の時も愛野さんは色々な人に引っ張りだこであり、恐らく今も人気者としての役割を果たしに行ったのだろう。
そんな愛野さんをすごいなぁと思うと同時に、僕の中には小さくて、けれども確かなモヤっとした気持ちが朝から生まれている。
この正体にはもう気付いており、僕はそんな自分自身に対して少し笑みがこぼれてしまった。
とりあえず、今は愛野さんとの合流に備え、どこで時間を潰そうかと僕は考え始める。
教室にはまだ生徒が沢山残っており、何やら前の方では盛り上がってもいるため、ひとまず教室の外に出ようと僕は決めた。
そのまま誰もいない渡り廊下までやってきた僕は、カバンから小説を取り出し、夕日をバックにしてじっくりと文章に目を通していく。
たまには立ちながら本を読むのも悪くないなんてことを考えていると、
「川瀬くんっ」
と誰かに横から名前を呼ばれた。
その方向に顔を動かすと、意外な人物がそこにはいた。
「桐谷さん、こんにちは」
僕は本を閉じ、笑みを浮かべながら桐谷さんに挨拶を行う。
桐谷さんも「こんにちはっ」と言いながら笑顔を返してくれた。
僕の目の前にいる桐谷さんだが、今や学校では知らない人がいないほどの有名人だ。
修学旅行の後から、桐谷さんは大変身をした状態で学校に登校をしている。
あの時からも話題にはなっていたが、修学旅行明けからの人気ぶりは凄まじく、愛野さんに並ぶほどの美少女として学校では注目の的となっている。
そんな桐谷さんだが、性格は変わらず大人しく控えめなようで、そのギャップが人気に拍車をかけているのだとか。
桐谷さんがいるクラスの前を通る時は、廊下から桐谷さんを眺めている人たち(主に男子)が多く、色々な人が声を掛けてくる愛野さんとはまた違った人気者の扱いを受けているように僕は感じている。
そして、そんな桐谷さんは持っていたカバンを開き、中から何かを取り出して僕に渡してきた。
「今日はバレンタインデーなので、良かったら受け取ってくださいっ」
それはやっぱりチョコだったようで、僕は桐谷さんからもらえることに少しびっくりしながらも、
「桐谷さん、ありがとう」
と言いながらそのチョコを受け取った。
すると、「あっ!」と桐谷さんは声を上げ、慌てた様子でこう言ってくる。
「あのっ、このチョコに深い意味はなくてっ、その、感謝の印と言うか何というか…、と、とにかくっ、えと、そんな感じですっ!」
そんな桐谷さんの様子を見た僕は、どんなに人気になっても「桐谷さんは桐谷さんだ」と強く感じ、どんどん口角が上がっていく。
そして、そのまま笑いを抑えきれずに僕は「あははっ」と声を出した。
僕が笑う様子にびっくりした顔を浮かべた桐谷さんだったが、すぐに「ふふっ」と僕に釣られて笑い始めた。
二人しかいない渡り廊下に、僕と桐谷さんの楽しい笑い声だけが響いている。
しばらくして笑いも落ち着いた後、桐谷さんは僕にこう話し掛けてきた。
「川瀬くんは、前はもっと悲しくて苦しそうな顔をしていたけど、今はとっても明るくて、そして楽しそうですっ」
そう僕に伝える桐谷さんの顔には、温かい「優しさ」というものが溢れていた。
それは、僕が大切な人たちから感じるものと同じであり、桐谷さんの優しさに胸が温かくなっていく。
「前を向くきっかけをくれた、大切な人たちのおかげ…かな」
僕の言葉に、桐谷さんは優しい笑顔を返してくれた。
僕は、桐谷さんに感謝をしている。
桐谷さんは僕のことを「ヒーロー」だと言ってくれていたが、自分の弱い部分を受け入れ、こうして今は「前を向いて」眩しい笑顔を見せてくれている桐谷さんは、今の僕の「目指すべき姿」そのものだ。
今の僕は、「前を向いて」歩いている最中である。
先が不安になることはもちろんあるが、そんな時に、僕の頭には桐谷さんの姿が思い浮かぶ。
桐谷さんがその不安を克服してみせたことが、今の僕には大きな力となっている。
桐谷さんは一年生の校外学習で見せた弱さを受け入れ、観覧車の時には前に進むことの大切さを僕に証明して見せた。
「羨望」と表現するのが良いのだろうか、僕はそんな桐谷さんの「眩しい姿」を、前に進むためのお手本のように感じている。
だからこそ、僕に道を示してくれた桐谷さんは、僕の「ヒーロー」でもあるのだ。
僕はそんな桐谷さんに視線を合わし、
「ありがとう、桐谷さん」
と感謝を伝えた。
いきなりの感謝だったこともあり、桐谷さんは不思議そうな顔を浮かべたが、
「川瀬くんの力になれたのなら良かったですっ」
と返事をしてくれた。
そして桐谷さんから、
「これからはたまに声を掛けても良いですかっ?その、本の話とか、まだまだ沢山したいのでっ」
とお願いをされたので、
「うん、もちろん!」
と僕は桐谷さんに力強く頷いてみせた。
実は、桐谷さんと話すことに僕は少し緊張をしていた。
観覧車の後、桐谷さんとどう接すれば良いかが分からなかったからだ。
しかし、今は「読書仲間」として、こうして笑い合いながら会話をすることができている。
僕は、本当の意味で桐谷さんとの「気まずさ」がなくなったような、そんな気がした。
***
桐谷さんと別れ、僕は再び自分の教室へと足を動かす。
さっきまであった廊下や教室の喧騒はほとんどなく、ちらほらと生徒を見かけるだけで、ほとんどの人は部活動などに移動をしたのだろう。
そんな静かな廊下を歩き、自分の教室の扉を開けると、中には愛野さんの姿だけがあった。
愛野さんは窓際の、ちょうど僕の席があるところくらいに背を向けて立っている。
「愛野さん、お待た…せ?」
そんな愛野さんの背中に声を掛けると、愛野さんは僕の方に振り向いてくれたのだが、その顔は今にも泣いてしまいそうな感じであった。
そんな愛野さんの様子に僕が動揺をしていると、
「…川瀬は、桐谷さんと仲が良いの…っ?」
と、愛野さんは少し震えた声で僕にそう尋ねてきた。
恐らくだが、用事を済ませて教室に戻ってくる時に、僕と桐谷さんが渡り廊下で話しているのを目撃したのだろう。
僕は、何だか愛野さんにとんでもない誤解をさせているような気がしたため、すぐにさっきの状況を説明し始める。
「桐谷さんは一年生の時のクラスメイトで、本の趣味が一緒だから少し話したことがあったんだ。今も本の話をしていただけだよ?」
僕の説明を聞いた愛野さんは、「でも…、川瀬が持ってるのって、バレンタインデーのチョコだよね…?」と不安げに瞳を揺らす。
___その愛野さんの言葉を聞き、朝から愛野さんの様子がおかしかったことの理由に僕は確信を持った。
「これは桐谷さんからもらった友チョコだよ」
そう、このチョコは、読書仲間から感謝の印にもらったチョコである。
そして僕は、愛野さんの方に真っ直ぐ視線を合わせ、愛野さんにゆっくりとこう尋ねた。
「多分だけど、愛野さんは僕が他の人からチョコをもらうことに、『嫉妬』してくれてたんだよね?」
そんな僕の問い掛けに、愛野さんは顔を一瞬で真っ赤に染める。
そして、恥ずかしそうにしながらも「…うん」と肯定を返してきた。
やっぱり、今日の愛野さんのムッとした表情は、『嫉妬』からきていた表情だったらしい。
すると、愛野さんは「ごめんなさいっ!」と頭を下げた。
「川瀬の言った通り、私は今日一日『嫉妬』してた。律や桐谷さんが川瀬にチョコを渡したのを知って、胸が苦しかったの。誰からチョコをもらうかなんて、川瀬の自由なのにね。勝手に悲しくなってムッとしたりしちゃって、本当にごめんなさい…っ!」
そんな愛野さんの言葉を聞いた後、僕は優しく「顔を上げて」と愛野さんに伝える。
愛野さんはその「嫉妬」を僕に謝ってくれているが、僕は怒ってはいないし、むしろその気持ちを嬉しいとさえ思ってしまっている。
それに、僕も全く同じモヤっとした気持ちを抱えていたところだったので、僕はそれを愛野さんに話した。
「僕は愛野さんに怒ったりなんかしてないよ。それに、実は僕も同じ気持ちだったんだ」
「同じ気持ち…?」
「うん。愛野さんは朝から沢山の人とチョコの交換をしたって言ってたでしょ?僕はその場面を見てないから、愛野さんが他の男子にチョコをあげてるかもしれないと思って、勝手に『嫉妬』してたんだ。だから、僕も愛野さんと一緒だよ」
僕が自分の気持ちを打ち明けると、
「私、他の男の子には『誰にも』あげてないよっ!」
と愛野さんが言ってくれたことで、僕の「嫉妬」は綺麗に消え、胸の内には「安堵」が広がった。
「良かったぁ~」とその気持ちを口に出すと、
「…川瀬も私に『嫉妬』してくれてたんだっ」
と愛野さんは嬉しそうな表情を見せ始める。
それに合わせ、僕の顔にも笑みが浮かび上がっていく。
そうして僕たち二人は、恥ずかしさを滲ませながらお互いに笑い合った。
その時間は、何だかとても心地良かった。
そんな時間を過ごした後、愛野さんはラッピングされた箱を胸の前に抱え、頬を赤くさせながら僕のことを真っ直ぐ見つめてくる。
そして、愛野さんは少し改まった様子で僕にこう口を開いた。
「川瀬っ、良かったら私のチョコを受け取ってくれませんかっ?」
そう言って愛野さんはその箱を僕の前に差し出してきた。
僕はそのチョコが入った箱を受け取り、愛野さんに感謝を告げた。
「愛野さん、ありがとう!」
愛野さんからチョコをもらえたことが嬉しくて、僕の心は無条件に弾んでしまう。
それに、愛野さんは男子には「誰にも」チョコをあげていないと言っていた。
つまり、愛野さんからチョコをもらえたのは僕だけということになり、その事実に胸が熱くなっていく。
そんな嬉しさを浮かべている僕に、愛野さんは更にこう言葉を続けた。
「私のチョコは、えと、『本命』だからねっ」
もじもじとしながら小さくそう伝えてくれる愛野さんに、僕は自分の顔が真っ赤になるのを感じる。
胸のドキドキを誤魔化すように、
「今食べてみても良いっ?」
と僕は愛野さんに尋ねた。
「うんっ♪」と愛野さんが頷いてくれたので、綺麗にラッピングされた箱を開けると、中には美味しそうなトリュフチョコレートが並んでいた。
もしかしてと思い、
「愛野さんが作ってくれたの?」
と聞いてみると、「うん…っ、えへへっ」と予想通りの反応が愛野さんからは返ってきた。
このトリュフチョコレートは、愛野さんの手作りのようだ。
他の男子が知ったらとんでもないことになりそうだが、これは「僕だけ」のチョコなので、誰にも教えるつもりはない。
そうしてそのチョコを僕は一つ手に取り、自分の口の中へと運んだ。
「…っ!愛野さん、これとっても美味しいよ!」
愛野さんは美味しくできたか不安そうな顔を浮かべていたが、僕の感想を聞いて、
「本当っ!?良かったぁ」
とホッとしたような表情を浮かべた。
愛野さんに伝えたように、このチョコは甘さもちょうど良く、濃厚さもあって「美味しい」以外の感想が見つからないほどの出来栄えであった。
病院での出来事の後、僕には味覚が戻っており、色々な食べ物の味をしっかりと感じることができるようになったのだが、このチョコはこれまで食べたどんなチョコよりも美味しいと僕は思った。
そして僕はすぐにチョコをもう一つ手に取り、自分の口の中へと運んでいく。
チョコがこんなに「幸せ」な味がすることを、僕は今日初めて知った。
「美味しい」と言いながら僕がチョコを食べる姿を、愛野さんは楽しそうな笑みを浮かべながら見つめている。
そこから僕たちは、南さんが教室にくるまでの間を楽しく会話しながら過ごした。
今日も色々とあったが、こうしていつものように楽しい時間を過ごせているのだ、結果オーライであろう。
今年のバレンタインデーのことは、きっと忘れることはないと僕は思った___。
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