15.ハルバラン
入口でのトラブルを超えて、快適にカコとスレイは機世界首都ミキーネを中心に向かって走る。
「昨日の今日だけど、意外と大したことなさそうだな~カオスなんたらも」
ミキーネのビルの街並みは落ち着きを保っていた。カオス現象について前から知っていたようだったし、色々対策されていたのだろうか。
崩れた建物やガレキが散らばってはいるが、業者の機世界人が大きなロボットを使って片付けている。
「オレとマスターがいつも行ってる市場は、ミキーネの西区にあるんだけどな」
「中央の様子も見といたほうがいいってマスターも行ってましたね」
街行く機世界人は個性がバラバラだ。それこそ機巧の部分によって異なっている。
頭部だけそのまま機械になっている人や、首以外が機戒で、ものすごい体格をしている人。背中にいくつものアームがついている人もいる。逆に、一見ほとんど機械の人にみえない人もいる。
機世界人だけではなく、魔世界人と思われる人も少ないけどいるようだ。シェフとは異なってわかりやすい。角の生えた人や狼のような人。ゴーレム?みたいな大きな土でできているような人もいた。
機世界人と魔世界人は協調して過ごしているみたいだ。ミキーネが首都だということもあるのだろう。
「おー、なんだか騒がしいな」
ミキーネの中心にはより一層巨大なビルー《シップ》と電光掲示板に文字が映し出されている。とそれよりも伸びたタワーのようなものが聳え立っていた。
その真下の大きな広場にたくさんの機世界人、魔世界人が集まってい騒いでいるらしかった。
「…バランさま~!」
「英雄がこんなすぐに来てくれるなんて!」
「機世界と魔世界の協定は確かだということだな」
「ヴファイ局長も、魔世界の都市のほうにすぐに向かったとのことだ」
ざわざわと人々が中心にスペースを開けて喋っている。
「なんだ?誰か来てるのか?有名人か?」
私とシェフはアオズマ号から降り、みんなの後ろについて、覗きこむように背を伸ばしたりしていた。
「おい、誰がきてるって?」
シェフがすぐ前にいた頭頂部が機巧になっているらしい機世界人に話しかけた。
「ん?ああ…」
彼がその質問に答えようとする前に、より大きな声が中心から聞こえた。
「皆さま!お集まりいただき非常にありがたく思う!ワレは魔世界の公爵!ハルバラン・バランである!」
「ワレが機世界に来たからには、機世界に滞在する魔世界人たちのみならず!機世界の皆さまもワレがいかなる危険からも救ってみせようではないか!」
大きくて、さらに突き抜けて通る声だ。
おおー!と観衆は声をあげた。
「ハルバラン…?」
シェフがその名前を聞いて怪訝な顔をしてた。
「どうかしましたか?」
「ハ、ハル兄…?」
そうシェフがつぶやくと、その言葉にピクリとハルバランの耳が反応した。
「スラ?」
人々のざわざわとした声のなかのつぶやきは、彼の驚異的な聴力…いや、その言葉に対する過敏な反応力によって感知された。
「ちょっと、スマヌ。あいスマヌ!」
ぶわっと前方から風が吹き、中心の人物、ハルバランが飛び上がった。
ストっと着地は柔らかに、その大人物は私とシェフの後ろに立ちふさがる。
「スラ、スラではないか!!」
二メートルは優に超えている身長に、赤と青がキレイに混じった髪をオールバックにツンツンと後ろに伸ばしている。
きりっとして目力がすごい。
「ハ、ハル兄…」
明らかにシェフは嫌そうな顔をしている。
こんとんの多い料理店!~the diner of chaos and daily~ JB @redtal073
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