11.幕間

私は目覚めたときと同じ部屋の同じソファを借りて寝させてもらうことになった。シャワールームと、ソファ二つ。元々ここはただの休憩室だったけど、今はマスターもシェフもここで寝泊まりしていると言っていた。今日はもう少し店内と外の状況を確認して後で寝るらしいから、先に横になってていいと言われた。




十分すぎるほどだけど、マスターとシェフはすぐに新しい部屋を用意してくれるとも言っていた。私はここで働かせてもらうことになったから。




私をこのダイナーの一員としてむかえいれてくれるということがなによりもうれしかった。


目をつぶって今日起きたことを一つ一つ思い出す。すごい長い一日だったから。




ウニャアと私の寝ているソファにネコが飛び乗った。




ウニャア…ゴロゴロゴロ…。




のしのしと私の身体の上を歩いて仰向けに寝ている私のお腹のところで体勢を整えて座り込む。


重いけど…暖かい。




なんか、とっても小さい頃。まだ不思議なものを不思議だと気付いてもなかった頃。この暖かさを覚えている気がする。




そう、私は幼い頃からずっと不思議なものに出会うことが多かった。


それこそお化けだったりすごいでかい怪獣が街を歩いていたことだってあった。




それが原因で私は中学時代にいじめを受けていたのだ。限界を迎えたのは高校入学の初日の昨日。同じ中学の人にそのことを皆の前でからかわれたとき、私は逃げださずにはいられなかった。それがこんなことになるなんて。




ただ、不思議なものがみえていたのも、このカオス現象に関係があることだったのかもしれない。私には別世界のものが見えていたのだと。




だからスライムも機械人もそこまで受け入れるのに時間がかからなかったのかもしれない。魔世界っていうくらいだし、シェフみたいなスライムだけじゃなくて、やはりドラゴンみたいな大きくて怖いのもいるんだろう…そんなことを考える。






…そろそろ眠くなってきたみたいだ。






店内では、スレイとリーンが真剣な表情で気を張っていた。スレイは人間形体で腰に長剣を提げている。その柄に手をかけながら。




リーンは目をつむって手袋を外した手、指先を合わせている。


リーンの指先からはバチバチと火花が散っていた。




ビルの外。空を泳ぐ巨大で不気味な機械の魚の群れが危険を感じたのか、元の道へもどっていった。

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