day2. 世界の現在と買出しの日
9.カオス現象について
機械の一同はそれぞれ自宅にもどって、私とシェフ、マスター、レイヴンさんは料理店に戻る。
ボックス席の一つに腰を下ろして、少し待っていてくださいとマスターに言われた。
私とレイヴンさんはちょっと気まずそうに向かい合って座っていた。
私がなにか話をはじめようとしたとき。
バーの奥、カーテンで区切られた先から大きな声がした。
スライムのシェフ、スレイさんの声だ。
「お~い!料理できたから今持ってくぞ~!」
そうしてカーテンの隙間からヌッとでてきたのは、透き通った青色のツンツン髪。青色の瞳をきらきらとさせた背の高い男の人だった。
「よっ!」
にっこり歯を見せて笑う青髪、青色の瞳の彼は、先ほどいたスライムと同じ声だった。雰囲気からして同じだからそうだとわかる。
(ス、スライムだったよね…?)
スレイさんは手にお皿をもっている。
「ったく、腹を空かせたやつにはおれの飯を食わせてやらねぇとな。」
やれやれといった表情でテーブルに料理を置いた。
「あ、ありがとうございます。」
とりあえず目の前の疑問は置いておき、お皿にのった料理を見る。
「こ…これは…?」
それは、おそらくパスタ料理ではあるが見たこともない意味不明なドロドロのソースがかかっている。
お世辞にも、おいしく食べれそうな代物ではない。
「どうした?ガスラソースのパスタだぜ。」
聞いたこともない。
「おい、少女が困ってるぞ、キャディ。」
そう助け船を出してくれたのは、レイヴンさんだった。
マスターが後ろからやってきて言った。
「シェフ、残念ながらカコさんはその料理は食べれません。」
「は?!」
マスターはでしょ?といった顔をこちらに向け、どうぞという風に自分がもってきたサンドイッチ風の料理を私の手元に置いた。とてもおいしそうだ。
「これなら問題ありませんよ」
「あ、ありがとうございます」
シェフはちぇっとした不貞腐れた顔をしていた。
そんなシェフに向かってマスターが言葉をつづける。
「カコさんが機世界人に見えますか?」
そう言われてシェフは私をじっと見る。
「…確かに見えねぇかも。どこにも
パーツ…というのはそのまんま機械の部品のようなものだろうか?
私に機械の部分はないはずだ。
「じゃあなんだ?まさかただのヒトか?」
ただのヒト。彼らに比べると正にただのヒトだと思った。
「あ…多分そうです。」
「さっきいきなりでてきたやつらもヒト、じゃないか?」
レイヴンさんが続ける。黒づくめの装備の人たち。彼らも間違いなく私と同じただのヒトの部類だろう。
「はぁ?ただのヒトなんて、数千年に一度現れるか現れないかって話だぞ!」
シェフはかぶりをふってリアクションをした。
「…おそらく、それがレーアが予測したカオス現象ですよ。」
「ね、レイヴンさん?」
急に話を振られたレイヴンさんがあわてて首を縦にふった。
「ふぉういうことだな。」
レイヴンさんはシェフがもってきていた料理をもぐもぐと食べている途中だった。
「おめーレイヴンほんとに知ってんのかよ。」
じろりとシェフがレイヴンをにらみつけた。
「うるさい。料理が微妙だぞキャディ」
「あぁ??」
「あの、カオス現象ってなんですか。」
彼らの言い合いが続かないように私は、地震の前に言いかけていた言葉を、そっと手を挙げて聞いてみた。
マスターが応じる。
「そうですね、レイヴンさん。先ほどまで読んでいた新聞を持ってきてもらってもいいですか?」
新聞記事の一面。《ミキーネ中央新聞》。聞いたこともない新聞だった。
そのレイヴンさんが読んでいたときに声に出していた部分。
《
カオス現象のすべて…その記事をじっくりと見つめてみるが、専門用語が多く…正直難しすぎて分からなかった。
レイヴンさんもシェフも私も、頭の上に?が浮かんでいるようだ。
マスターはそのことに気付いたらしい。
「まあ要するにこれまでバラバラだった世界がごちゃごちゃにくっついちゃったって感じですかね。」
「…なるほどな。そしたら色んな大変なことが起きるということだな。」
レイヴンさんが答える。
「その影響で、おそらく先ほどのヒトたちが現れたんでしょう。カコさんと同じ世界の。」
「カコさんは一足先に迷い込んじゃったみたいですけどね、私たちの料理店がある機世界に。」
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