8.こんとんの多い料理店へ
黒装備の一員の出現から気を取り直す。
店内は先ほどの地震と銃撃の騒ぎでぐちゃぐちゃな状態だ。
「とりあえず足元が危険ですね」
マスターは箒を奥の部屋から持ってきた。
私はとっさに言う。
「あ、私!手伝います!」
レイヴンさん。機械の男性たちも手伝って、店内、床に散らばったグラスのかけらや皿の破片等を皆で掃除した。
「皆さんありがとうございます。」
マスターが言う。
「とりあえず、皆さんで外の様子を確認してみませんか?」
その提案に私たちは同意した。
そこでカウンターの奥に問いかける。
「シェフー!そろそろ出てきてください!」
「オレの料理…」
意気消沈して出てきたのはかなり落ち込んだ様子のスライム。
「ほら」
マスターが手を差し伸べ、その掌にぴょんと飛び乗る。そのままマスターは自分の頭の上にスライムをのっけた。
マスター、シェフ、私、レイヴンさん、機械の人たちの四人組。
そしていつの間にか足元に茶色のネコがとことこ。
マスターが先頭に、私たちは料理店の扉を開け、続く廊下を抜ける。その先に階段があった。
蛍光灯は少ないが灯っている。独特の雰囲気がでている。
廊下のあちこちには色々なポスターや張り紙、落書きが散らかっていた。
治安が悪い場所なのかもしれない。私はいつの間にそんな場所に足を踏み入れていたのだろうか。
階段を上がる。
夜の透き通った空気が私たちの足元にスゥっと入り込み気持ちがいい。
階段の先にからカラフルな光がチカチカと。
「なんだこれ…」
先にでたマスターの頭にのっかったシェフの声が聞こえた。
私たちは外にでて横並びになった。
まず気付いたのは、あちこちのビル・建物にかかった看板がピンク、黄色、緑に発光している。
繁華街のように。
「…キレイ。」
ただそれ以上に、私の目に飛び込んできたもの。
空。夜空。夜の闇に隠れていた星が、銀河がすべて一等星のように発光している。
それも赤、青、緑と。星々は連なっていたり、バラバラになっていたり。
映像でしか見たことのないオーロラのような光が帯を作っている。
まさに混沌としている。
遠くからは爆発音や何かのサイレンの音が聞こえてくる。
この繁華街には、私たちのほかにもたくさんの人?がいたらしい。
みんなが空を見上げている。
この異様さに声もでないのか。
美しさに見とれているのか。
「大変なことが起きたみたいですね。」
私に目を向けてマスターがゆっくりと口を開けた。
「どうしましょうか?お客さん」
「さっきの人たちは追い払ってしまいましたが…ご家族に連絡は…。」
「か、帰りたくないんです。」
私は反射的に答えた。
「い、家には戻りたくないんです。」
「でしたら…。」
「私をおいててください!雑用でもなんでもします!」
とにかく必死に言葉を繋げる。
だめで元々の気持ちだけど。
「お願いします!」
頭を深く下げる。
そんな様子をみてマスターは優しい笑みを浮かべる。
「ま、いいんじゃねぇの?これでオレの手下も増えるってもんよ。」
頭の上のシェフが話す。
「こんな状況でおかしいかもしれませんが…。」
「私は料理店のマスター、リーンといいます。」
「オレはシェフのスレイ!」
「私は…カコって言います。」
「よろしくお願いします。カコさん。」
「よろしくな!カコ!」
にゃーん
足元でネコがなく。
マスターが伸ばした手袋をつけた手を私はそっと。
触れるだけのように握る。暖かい。
出会うはずがなかった様々な運命が交わる。
誰が望んだのか、求められてもいなかっただろう混沌。
それでも私の物語は、この混沌からはじまったんだ
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