2.扉

また少し眠りに落ちていた。少しボーっとして、改めて状況を把握する。


私は階段から落ちて気を失っていたところを助けられ、このソファに寝かされていたのだ。ブランケットをどけてソファに腰かけるように体勢を変える。


ウニャァ


「えっ?」


足元から黒い影がパパっと視界の外に逃げて行った。


ネコが寝ている私の足のほうで寄り添っていてくれていたらしい。ネコは素早い動きでこの場から去ってしまった。


周りを見てみる。落ち着くダークブラウンの壁は、コンクリートの壁面に上塗りされていて、黄色と赤色の分厚いラグ、ウッドテーブル。電源の入った円筒型のストーブが壁際の配置されていて、部屋は暖かかった。


私が身に着けているのは、通っている高校の白と薄水色のセーラー服。


そうだ、家にも帰らずに、着替えもせずに飛び出してきてしまっていたんだ。


リュックもなにもない。


スマートフォンもリュックの中、学校に置きっぱなし。


(…でも、逃げたくて仕方がなかったから。)


思い出したくない…とりあえず、介抱してくれた彼にお礼を言わないと。


部屋の少し奥の短い通路の先の扉の前に立つ。


扉の先からは先ほどより大きく音楽と話声が聞こえてくる。緊張する。


…すぐに出ていけっていわれるかな、それでもしょうがないと思うけど、そうしたらどうしたらいいんだろう。


私はほんとに自分勝手だ。


ドアノブに手をかけ、扉を開ける。

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