1.目覚める

刺々しい女性の声が頭に響く。


「またあんた?どんだけ目立ちたいのよ」


呆れたような男の声。


「今時オカルトちゃんとか…似合わないぞ」


学校から飛び出す。先の見えない闇へ、闇から闇へ…。


悪夢から目が覚めた。


意識がなくなるまで走って、歩いて、そして私は階段を踏みはずした。


身体が地面に投げ出され、道路のアスファルトに倒れていた。


…はずなのに、私が寝ているのはふかふかのソファのようだった。ブランケットがかぶさっていて暖かい。


頭はボーっとしていて倦怠感があるが、なぜか身体は痛くない。


すぐ横の壁を隔てた向こう側からはざわざわと人の声。おしゃれな感じのメロディの音楽が聞こえてきた。


ガチャリとすぐ近くから扉の開く音がした。サッとブランケットを顔を隠すようにもっていく。


(なんで隠れちゃってるんだろう。)


薄いブランケットの向こうから、オレンジの電灯にかぶさったシルエットがこちらにかがんで、私の顔の方に手を伸ばす。


心臓がバクバクとひどく音をたてる。


その手は私の顔の横を過ぎ、そっと頭に触れる。


「うん、大丈夫そうですね」


「…よかった」


ホッとしているとても穏やかな声色。


そうか、私の頭の怪我を心配してくれていたのか。

なにかされるんじゃないかと少しでも思った自分が恥ずかしい。


人影が私の側を離れて扉のほうに戻るとき。


「いつでもでてきてくださいね、気持ちが落ち着いたら、お腹が空いたら。」


彼の姿ははっきりとみえてないけど、彼が優しく微笑んでいるのがわかる。


私が起きていることに気付いていたみたいだ。


そしてドアが開かれたとき、向こう側の音が大きくなる。ザワザワと笑い声と、一体になったメロディ。


心地のよさを感じながら、私は再び意識が遠のいていった。

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