こんとんの多い料理店!~the diner of chaos and daily~

JB

day1. 出会いと混沌のはじまりの日

プロローグ 出会いへ

青暗い空に雲が立ち込める。


赤く発光したネオンサインは余りにも高所に輝きすぎて、その足元にはとどかない。


狭く入り組んだ暗闇の路地。アスファルトの上。


私は倒れていた、灰色の道で。どこかもわからない道。追いつめられたその先の道に。



これでもいいか、心の中でつぶやいて、意識は遠のいていく。



少女の頭から血が道に広がる。



ぽつぽつと降り始めた雨はその血を洗い流す。少女の痕跡をこれでもかと消そうとしていしているように。



冷たい雨が倒れた身体に打ち付けられ、赤い光は拡散する。



雨にも関わらず、一匹のネコが少女に近づいた。



(こちらにおいで)



空耳だろうか、そんなネコの声が聞こえた気がした。…ネコの声?



そして遠くからかすかに聞こえてくるエンジン音。



話声。




少女の意識はそこで途切れた。




「おい!雨だ!やばい!やばい!濡れちまう!」




エンジン音はいよいよ大きくなり、倒れた少女の影をバイクのライトが照らした。




「あ、あぶねぇっ!」




急ブレーキを踏み、寸でのところでバイクは横向きに止まる。




「おいおい…!」




後部シートから人影が降りる。




「どうしました?」




二つの人影が少女を見下ろしていた。




「なんだ?変な恰好してるな~」


怪訝な表情を浮かべるツンツン頭の男。




「まあ変なもんがぶっ倒れてるのも珍しくもねぇか!」


「いこうぜマスター 濡れちまう!」




問いかけられた男は傘もささずに少女のすぐそばにかがみこんだ。




「…背負ってあげてくださいね?シェフ」


一方の男が立ち上がり、ニコリと笑ってシェフと呼ばれた男に顔を向けた。




「…はぁ?」




「お客さんですよ、シェフのすばらしい料理を振舞ってあげましょう。」


つづけて、男の肩を叩いて笑う。


「ほらほら。」




すばらしい料理、というところに引っかかったのか、ツンツン頭の男は嬉しそうな顔になる。


「ちっ!しょうがねぇな」




「バイク…押していきますね!」




「急げー!!」




少女を背負ってパシャパシャと暗い道を走る。ツンツン頭の男。「シェフ」




バイクを強く押しながらかけていく男。「マスター」




上空の看板は未だ煌々と光っている

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