曇り空の下の建物の中にて

 夏が過ぎても昔の人が白露しらつゆと呼んだものは草木に宿らず俺達人間という種族を濡らす汗として体に宿る。

 思ったところで、口に出したところで解決するわけでもない言葉もんくのようなものを胸に秘め今日も俺はひたすら今日という時間を報われない労働に費やす。


 ただただ自分たちばを守りながら暇な時間を作り過ぎず、仕事が過密になり過ぎない塩梅を見極め作業スピードを調整する。

 そうしている間に知らない所でお偉いさんがたがビールを頼む感覚でこちらの仕事を増やしてくるのを想定して備える。


 考えるリソースは仕事後の習慣しっぴつの内容の思案に使う。良いアイディアには周りにバレないように笑い、悪いアイディアは労働くぎょうの不満とともにため息にして吐き出す。


 今の俺には高校時代かこのような輝きはない。

 それでも今の俺にはあの時の俺にはない『キセキ』がある。

 『過去の俺がそれを見たらたらひっくり返りそうだ』と周りにバレないようにほくそ笑む。


 胸の内に広がるのは薄暗いスカイグレー。

 そこには正義も悪もない。光も闇もない。

 あるのは小さく燃える炎だけ。

 それを『今まで出会った人達から勝手に受け継いだ心のバトン』とでも表現あらわそうか。

 小さな炎は多くの色を湛えて今日も小さくも煌々と燃える。


 室内には届かない空模様は曇天スカイグレー

 空を染めている色と胸の内に広がる色が同じ色なのは何故なぜかは分からない。

 でもその色が薄ら暗くほんのり青いのはあの時の青春きおくを忘れないためだと思う。


 今日も俺は代り映えしないが面白い世界で俺だけの人生ものがたりを紡ぐ。

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