空色証明

 ここは地元にある池を中心とした公園。

 昔は何か採れたようだが今はその影も形もない。

 私個人の感覚としては近くもなければ遠くもない。軽い運動するにはちょうどいい距離。


 中心近くにある小島の一つ。そこから獣道めいたところを通った手入れの行き届いていない草の道。その先にある大きな岩に腰を掛ける。


 風が髪を軽く撫でる。

 親しくもない現象ものからの行為に心地よさを感じる。なぜだろう?


 吐く息はまだ白くならず、上着は欲しいが手袋はつけなくてもいい温度感。

 昔のこの時期はこんな感じじゃなかったような気がする。なぜだろう?


 池の上の石にカメが2匹寄り添って日向ぼっこをしている。なんかいいな。

 暦上はもう冬眠しているはずなのに。なぜだろう?


 子供のように目に見えるもの全てに問いを抱く。

 子供とは違い、ある程度の推察はできるだろうし、分からなくても調べることもできる。なのに疑念を浮かべて考えてしまう。なぜだろう?


 そんな気持ちをシャットアウトして、視界に映る人間を無視して、風に揺られる木々の真似をして自然と一体になろうとする。


 頭の中にある思考や感情、思い出や知識を空にぶちまける。

 子供の落書きのように頭の中すべてが世界中の空に広がった




 なにも考えず生きていたい

 しかし考えることが私を私たらしめる証だから思考これを止めることは出来ない。


 冬眠する熊のように眠っていたい。

 しかし動いていないとカビてしまうような気がしていてもたってもいられなくなる。


 行動は打算的で何度も考え直して計画を練る。

 しかし何があってもいいように逃げ道を作っておく。




 王道があるのに新たな道を探求すると言って道を外れたがる。

 安定を求めるくせに捻くれている。


 苦難に直面すれば楽な回り道みちを探し始める。主人公であれば正面から立ち向かうだろう。苦難に歯を食いしばって耐えるだろう。

 なのに私はただずるい思考を回すだけ。機が熟すのをただただ待つだけ。


 小さく息を吐くと空の下側の薄い空色ブルーに吸い込まれていくように空にぶちまけた頭の中が収束するようにして頭の中に戻ってゆく。


 


「──だから私は主人公ではない」




 一言だけ証明するように呟く。立ち上がってコートの裾を軽くはたいた。

 もう一息だけ吐きだし、歩き始める。




 そうだ。私は主人公なんかではない。なってやるもんか。

 ──それでも私は主役ぶる。


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