終章 - 継いだもの -
シュトたちを追う《狂える獣》はいなかった。
何とか息をつき、朝を迎えた。
野営の場所には旅に必要な道具も置き捨ててある。
タイカがやや先行し、野営地へ戻った。
焚火の燃え滓と血だまり。血だまりの中に沈む獣の死骸。
野営地には、それだけが残っていた。
かろうじて、四足の動物だと分かるその死骸に、少年は近づいた。
膝をつく。外套が血で汚れたが、少年は気にした様子はない。シュトたちも止めなかった。
赤黒く固まった獣の毛を、少年はそっと撫でた。撫で続けた。
数日後。
シュトたちは村を見つけた。
その間、少年は静かについて来ていた。
ただ母親の遺髪と、血で赤黒く染まった獣毛のひと房を握り続けていた。
村の入口には、崩れかけた石柱があった。
門番のように佇むその石柱を、シュトは見上げた。
亡くなった女性が書き記した村。この村かもしれないと、シュトは思った。
入口近くの畑で、しゃがみ込み土をいじる老人が顔を上げた。
どことなく、見たことのある顔。少年を見る。目元が似ていた。
老人が胡乱げにシュトたちを見る。視線がさまよい少年を見つめ、そして驚きの表情を浮かべた。
老人が駆け寄って来た。
── 第二話 了 ──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます