22話 最愛の妹からのSOS

「リズ様からの依頼ですか?」


 ニーヴは手紙の中身が気になっているようだった。


「いや、リズからは研究チームの報告が事細かに書かれているだけだったよ。

 アジル王国、モイス共同体からそれぞれ最高位の科学者を集めたようだ」

「それはすごいですね……世界の頭脳が一同に……」

「そして、その中には元サッチ王国の科学者もいるそうだ」

「元サッチのですか⁉️ やはり生き残りがいたのですね‼️」


 ニーヴの驚きも無理はない。

 サッチ王国の人間は虐殺されたのだ。


 一人として残らず――


 だがそれは、調査の『結論』でしか無い。

 調査とは、『結論』を出さなければならないものである。

 期日までに『結論』を出し、報告しなければならない。


 例え、どんな可能性が残っていようと――


 そう、現場を見たものは少なからず思っていたことである。


 『もしかしたら、生き残りがいるのではないか?』


 なぜなら、完全に全て国民を虐殺するなど、普通は不可能であるから――


 どんなに完璧な計画を企てていたとしても、人々の行動は制御できない。

 であれば、何かの拍子に、虐殺を免れた人が少なからずいるのではないか?


 絶対ではないが、可能性としてはゼロではない。

 それは、ミオも、ニーヴも思っていたことである。

 そして、その可能性は、サッチの元科学者ハールーンの登場により、確信に変わった。


「もしこれで、新たに生き残りが見つかれば、あの『ゴールデン・レコード』に頼らなくても、事件が解決しますね‼️」


 ニーヴは嬉しそうに言うが、ミオは違った。


「どうだろうか……」

「何か懸念でも?」

「リズが手紙を送ってきた意図だ」

「それはもちろん。ハールーン殿という、生き残りの存在を教えるためでしょう」

「それならわざわざ手紙にしないで、本人が来て話せばいい」

「……急いで教えたほうがいいと思ったからでは?」

「……いや、動けないんだと思う」

「リズ様がですか?」

「ああ」


 ニーヴは冗談だと思ったが、ミオの顔は真剣そのものだった。


「リズはこれから研究が進んでいくうちに、自分が動けなくなり、何か大きな力に巻き込まれ、身動きが取れなくなる――そう考えて手紙を送ってきたように思う」

「……いやいや、飛躍しすぎですよ」

「でなければ、わざわざ研究結果の詳細を、上層部ではなく私に、個人的な手紙として送ってくるなんて不自然だ」


 そして何より、ミオが気にかかったのは最後の文。



『これから何が起きるか分かりませんが、私のことを守って下さい、お兄ちゃん』



 明らかにまずいことが起きると、リズ自身が感じている証拠だった。

 ニーヴは、理解しがたいと言った顔で、ミオに聞いた。


「……では、リズ殿は我々にどうして欲しいとお考えなのでしょうか?」

「先回りだな……」

「……どういうことですか?」

「『ゴールデン・レコ―ド』がなんの意味を持っているのか――

 それを先に見つけて欲しいのかも……」


 ニーヴは少しミオの事が心配になっていた。

 いくら可愛い妹からの手紙とはいえ、これは妄想レベルの深読みだと思っていた。



 思っていたのだ――



 心配そうにミオを見つめていると、窓の外から何かが反射していることに気付いた。


 なんだろうか――と、思った瞬間、ニーヴは勘づいた。


「司令官‼️」

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