17話 怪我の功名
「キアン君……‼️」
リズは思わず抱きついた。
その行動に、キアンは驚き、照れくさくなった。
「あの……離してもらっていいですか」
「あ、ごめん‼️ 傷が痛むよね」
「いや、身体は大丈夫です。頭は痛いですが……」
「……ごめん」
リズはまた自分の責任を痛感し、暗くなってしまった。
フーヴとミオも、同様に暗くなってしまったので、キアンは困惑していた。
「あの……こんな空気にするつもりじゃなかったんですが……」
「ごめんね……」
リズはそう言ってから、自分が『ごめん』しか言っていないことに気づき、言葉に窮した。
キアンは仕方なく、自分から話を切り出した。
「リズ学師は先ほど、なんの成果も無く……と言っていましたね?」
「うん、実際そうだからね……」
「それは間違いです。成果はあります」
「励ましてくれるのは嬉しいけど……成果はなにもないよ?
旧ゴールウェイ王国区域が更地になっていたっていうのが分かったけど、これは本来の目的じゃないし……」
「正真正銘、ど真ん中の成果を手に入れていますよ」
「……キアン君、頭撃たれておかしくなった?」
「調子が出てきましたね、リズ学師」
「褒めてないよねそれ」
「リズ学師の求めていた成果――『不明』の成分の正体。それは確かにあそこにありましたよ」
「……え?」
リズは、キアンの言っていることがまだ良くわからなかった。
「あの時、リズ学師は私に、空洞の底を一回見て欲しいと、お願いしましたよね?」
「したような……?」
「そして私はサングラスを取り、空洞の底を見ました」
「その時に見つかったの⁉️」
「いいえ、ただの土と岩だけでした」
「……じゃぁどこで見たの?」
「――あの銃弾です」
「銃弾……?」
「私の目に当たる瞬間、確かに見ました」
「ほ、本気で言ってるの?」
リズは、驚きと困惑が混じった顔でキアンにもう一度尋ねた。
キアンは力強く頷いた。
「間違いありません。
あの銃弾には――我々が探していた『不明』の成分があります」
病室に緊張が走った。
リズは、キアンの見解を聞くように言った。
「それはつまり……本来鉛のハズである弾丸に、『不明』の成分があったってこと……?」
「そうなると思いますが、はっきりとは……何しろ一瞬だったので」
「うーん……そうなると、結構特殊な弾丸だよねそれ?」
リズは、ミオを見て言った。
「少なくとも、オーウェン共和国で製造されている銃弾は鉛が基本だ。他の素材も無くはないが、『不明』な材質で銃弾を作ることはない」
ミオは、キアンに向けて言った。
「もし、弾丸が回収出来たら大きな一歩になりますか?」
キアンは頷いた。
「大きな一歩どころではないと思います。少なくとも、材質面の謎は完全に解明されますので」
ミオはすぐさまニーヴに指示を出した。
「撃たれた現場に行って、弾丸の回収を試みてくれ」
「了解です‼️」
ニーヴはすぐに立ち上がり、素早く病室を出ていった。
「リズ、銃弾が回収できたら直ぐに連絡する」
「うん、ありがとうお兄ちゃん‼️」
そう答えるリズの顔には僅かに笑顔が見えた。
それを見て、ミオは少し安心したようだった。
「キアン殿も無理をせず、療養に努めて下さい。これからとても忙しくなると思いますので」
「お気遣いありがとうございます、司令官殿」
ミオは一礼し、病室を出ようとすると、何かを思い出したのか立ち止まった。
「それと、リズ」
「うん?」
「これはまだ、確定ではないのだが……
近々、解析チームの増員が承認される予定だ」
「え、依頼した記憶はないんだけど……」
「うん、上層部が進めていたらしく、俺も先ほど知ったばかりだ」
「結局、大元の権限は上層部が握るのね……」
リズは嫌気が差したようにため息をついた。
「現場をかき乱してすまない……だが、中身は悪い話ではなかったよ」
「どういうこと?」
「まだ人員は確定していないが……合同研究チームが発足されることになった」
「合同研究……?」
「うん、上層部はより早く解析を進めるために、アジル王国とモイス共同体から学者をお借りするそうだ」
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