15話 凶弾

 凶弾、天盤学師を襲う――


 その知らせはすぐさまオーウェン共和国内に行き届き、ミオの耳にも入った。

 ミオは慌てて病院へ向かった。

 己を責めながら――

 妹を巻き込んだことを悔いながら――


 病院へ着くと、そこには――


 リズとニーヴが待っていた。


 その姿を見て、ミオはホッとした。

 ニーヴはこちらに気づくと、すぐさま床に座り、頭を擦り付けた。


「ミオ司令官、申し訳ございません‼️

 与えられた指令を完遂できず……加えて、同伴者であるキアン殿に瀕死の重傷を……」


 狼狽するニーヴの肩に、ミオは優しく触れた。


「顔を上げろ。無事で何より、帰ってきただけで勲章ものだ」

「ありがとうございます……‼️」


 ニーヴは感謝しながらも、顔を上げることはできなかった。


「リズ」


 ミオは、上の空で椅子に座る妹の元へ向かった。


「リズ」


「……え、お兄ちゃん?」

「大丈夫か?」

「あ……私は……大丈夫……でも、キアン君……キアン君が……」


 リズは涙をポロポロと流した。


「聞いている……許されない暴挙だ……キアン・ゴールウェイ殿は……?」


 リズが視線を移した。

 その先には、『手術中』と書かれた札が下げられたドアがあった。


「……大丈夫。きっと大丈夫だ」


 そう言ってリズを優しく抱きしめた。

 全く根拠はないが、妹を安心させたい。

 その一心での行動だった。

 と、ドアが開く音がし、全員が振り向いた。


 開いたドアは『手術中』の札が下げられたドア――


 中から出てきた医師に、ミオはすかさず近づいた。


「手術は……?」


 医師は一瞬驚いた様子を見せたが、ミオの階級章を見て、直ぐに態度を改めた。


「問題なく完了しました」

「それはつまり……」

「銃弾が左目を貫通したようですが、角度が良かったのか、脳には達していませんでした。大変だったとは思いますが、幸い命に別状はありません」


 リズとニーヴは抱き合って涙を流した。

 ミオもホッと胸をなでおろした。

 まず一つ、危機は脱した。

 しかし、まだ問題は残っている。


 一体何があったのか――


 ミオはそれを知る必要があった。

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