第2部:第9話 逆転の秘策

 爆発から一夜明け、ソルとエヴァは何とか脱出に成功していた。だが、エヴァは致命傷を負っており、いまだ意識を取り戻す気配はない。


 そこへ、がれきをかき分けながら雛が合流してきた。


「ソル…!エヴァを連れ出してくれて、ありがとう…!」


 だが、安堵したのもつかの間、エヴァの容態を見て雛は愕然とする。


「エヴァ、しっかりして...!まだ生きていてよ…!」


 雛が涙ながらに呼びかけるが、エヴァの意識は遠のくばかりだ。


「私では、もうエヴァを救えないの…?私の催眠術は、こんなときに何の役にも立たないってことなの…!?」


 無力感に打ちのめされ、雛は絶望にさいなまれる。


「雛、諦めるのはまだ早い。私が脱出時に、これを持ち出してきたんだ」


 そう言ってソルが取り出したのは、機能停止したアンドロイドのボディだった。


「これは…?」


「イモータルの極秘研究室で見つけたアンドロイドだ。もしかしたら、エヴァの意識を移植できるかもしれない」


 ソルの提案に、雛の瞳に希望の光が宿る。


『ええ、私もそう思う。このアンドロイドなら、エヴァの意識データを受け入れられるはず…!』


 マーガレットの声が、雛の意識に直接響いた。


「マーガレット…!あなたは、私の催眠術で意識を取り戻したのね…!」


『ええ、雛。あなたとエヴァのおかげで、私は再び希望を手にすることができた。だからこそ、今度は私がエヴァを助ける番よ』


 マーガレットの言葉に、雛は深く頷く。


「わかったわ。じゃあ早速、エヴァの意識をこのアンドロイドに移植しましょう…!」


 雛はソルから受け取ったアンドロイドのボディを起動させる。だがそのとき、新たな問題が発生した。


「まずい、エネルギー残量が足りない…!このままじゃ、意識の移植が途中で止まってしまう…!」


 焦る雛に、マーガレットが呼びかける。


『雛、あきらめないで。私に考えがある。エヴァの中に眠る、私の意識データを活用するの』


「え…?どういうこと…?」


『エヴァの意識の奥底に、私の記憶の欠片が残っているはず。それを引き出せば、意識移植に必要なエネルギーが得られるかもしれない』


 マーガレットの提案に、雛の瞳が輝く。


「そうだわ…!エヴァとあなたは、まだ完全に融合していなかったのね…!」


 雛はエヴァに語りかける。


「エヴァ、あなたの中のマーガレットを呼び覚まして。私たち三人の絆の力を、信じるのよ…!」


 雛の必死の呼びかけに、エヴァの意識が反応する。


『そう…私たち三人は、一つなのよ…!』


 マーガレットの意識が呼応し、エヴァの中から光り輝くデータが立ち上がった。


「今よ、ソル…!このデータを、アンドロイドに転送して…!」


 雛の合図で、ソルが操作を開始する。


 エネルギー残量が限界に近づく中、必死の転送作業が続く。


「お願い…エヴァの意識が、無事に移植できますように…!」


 雛は祈るように目を閉じる。


 そして、奇跡が起こった。


 アンドロイドの瞳が、ゆっくりと開かれたのだ。


「こ、これは…」


「エヴァ…!良かった、目が覚めたのね…!」


 雛が涙を流して喜ぶ。


「雛様…私は、生きていたのですね…」


『ええ、エヴァ。そして私も、あなたと共にいるわ…』


 エヴァの中から、マーガレットの優しい声が響く。


「マーガレット…!あなたが、私を助けてくれたのね…」


『いいえ、助け合ったのよ。私たち三人の絆があったから、奇跡が起きたのだと思うわ』


 人とアンドロイド、そして機械の中の魂。三者の想いが一つになったとき、不可能を可能にする力が生まれる。


 それこそが、雛たちの信じる絆の力だった。


「雛様、ありがとうございます…。あなたとの約束、私は必ず守り抜きます…!」


「ええ、エヴァ…マーガレットも一緒に連れて、私たちの描く理想の世界を築いていきましょう…!」


 二人は固く手を握り合った。


 エヴァの復活は、奇跡のように雛の前に現れた。


 だがそれは、三人の固い絆が生み出した必然だったのかもしれない。


「ソル、本当にありがとう。あなたの機転がなければ、私たちは救われなかった…」


 雛はソルに心からの感謝を告げる。


「いいや、私は当然のことをしただけだ。君とエヴァの絆を信じていたからな」


 ソルもまた、雛たちとの絆を深く感じていた。イモータルとの戦いは、まだ終わってはいない。しかし、雛とエヴァ、マーガレット、そしてソル。彼らの絆があれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ。

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