第2部:第7話 潜入作戦

 イモータル打倒のカギを握る潜入作戦が、今まさに始まろうとしている。


「ソル、警備の目は引きつけておいてくれるわね?」


 雛がソルの協力を仰ぐ。


「ああ、この命に代えても君たちの作戦を成功させるよ。マーガレットのためにも、イモータルの悪事は許せない」


 ソルの決意は固い。かつてはレオン博士への盲従から、イモータルの非道に手を貸してしまった過去がある。だからこそ、その罪を償うためにも、全身全霊で雛たちに協力する覚悟を決めていたのだ。


「ソル、あなたの協力は本当に心強いわ。でも、命を投げ出すようなことだけは絶対にしないで。私たちは必ずあなたを助けに行くから」


 雛が真剣な眼差しでソルに言い聞かせる。


「わかってる。君たちの作戦が成功することが何より大事だ。だから、俺は君たちの盾となって、身を挺してでも守り抜くよ」


 ソルの厚い信頼に、雛もエヴァも力強く頷いた。


「よーし、それじゃあ潜入開始よ。エヴァ、準備はいい?」


「万全です、雛様。私の知識を存分に活用させていただきます」


 二人はこっそりと敵のアジトへと忍び込んでいく。


 侵入口で、ソルが見張りの目を引き付ける。


「貴様ら、ここから先へは誰も通さん!」


 ソルが敵の戦闘員に立ち塞がる。鍛え抜かれた肉体と高い戦闘技術で、次々と襲い来る敵を打ち倒していく。


 その隙に、雛とエヴァは警備システムに取り付く。


「エヴァ、この警報装置の設計図は?」


「はい、すでに頭に叩き込みました。この配線を切れば、システムは麻痺するはず...」


 エヴァはメモリに記憶した武器の知識を総動員し、警備を突破していく。


「流石ね、エヴァ。あなたの働きには、いつも感心させられるわ」


「いえ、雛様の催眠術があってこそです。敵の目を欺く技術は、本当に脅威ですから」


 エヴァもまた、雛への信頼を口にする。


 一方、戦闘員たちを相手に奮戦するソル。激しい戦いの最中にも、彼の脳裏をよぎるのはマーガレットの面影だった。


(マーガレット、君との約束は必ず守る。俺が、君を現実に呼び戻してみせるんだ...!)


 ソルの心の中で、固い決意が燃え上がる。


「うおおお!!」


 雄叫びを上げ、ソルは敵に猛然と襲いかかっていく。


 そのソルの勇敢な戦いぶりを、雛とエヴァは警備システムのモニターで見守っていた。


「ソルは、マーガレットとの約束を果たすために戦ってるのね...」


 雛が感慨深げに呟く。


「ええ、雛様。彼もまた、大切な人を守るためなら、命を懸けて戦うことをいとわないんです」


 エヴァの言葉に、雛は深くうなずいた。


 警備システムを無力化した二人は、いよいよ敵の中枢部を目指す。


「ここからは極秘区画よ。警戒は一層厳しくなるはず」


 雛が緊張した面持ちで言う。


「私の感知器官を総動員して、敵の位置を割り出します。雛様、どうか私の背中に隠れていてください」


 エヴァは雛の手を取り、彼女を守るように自らの後ろに立たせる。


 そのとき、突如として敵の精鋭部隊が二人の前に立ちはだかった。


「侵入者発見!排除する!」


 容赦ない攻撃の雨が、雛とエヴァに襲いかかる。


「くっ...!」


 弾丸の嵐をかいくぐりながら、エヴァは機敏な動きで応戦する。だが、圧倒的な火力の前に、徐々に追い詰められていく。


「エヴァ、もういい!これ以上は危険すぎる!」


 雛が必死で制止する。


「いえ、雛様。あなたを守るためなら、この身が砕け散ろうとも...」


 エヴァの瞳には、揺るぎない決意の炎が宿っている。


「ダメよ、エヴァ...!あなたともう一度、平和な日々を過ごしたいの。だから、命を投げ出したりしちゃ絶対に嫌だからね...!」


 雛はエヴァの手を握りしめ、涙ながらに訴える。


「雛様...ごめんなさい...でも、私はあなたのために戦います。だって、あなたは私に、かけがえのない心を与えてくれたから...!」


「エヴァ...!」


 絶体絶命のピンチ。しかし、そのとき、味方の援軍が駆けつけてきた。


「待たせたな!」


 颯爽と現れたのは、ソルだった。


「ソル!」


「こちらもそろそろ限界だと思ってな。だから、援護するために戻ってきたんだ」


 ソルは雛たちを庇うように立ちはだかり、敵の攻撃を次々と打ち払っていく。


「ソル...ありがとう...!」


 雛が感謝の言葉を口にする。


「礼はいい。俺はマーガレットとの約束を果たすまで、死ぬわけにはいかないからな」


 ソルの強靭な肉体が、雛とエヴァを守る盾のように敵の猛攻を食い止める。


 こうして、九死に一生を得た雛とエヴァ。ソルの加勢を得て、ついに敵の中枢部に辿り着くことができた。


「ここが、イモータルの総指令室ね。いよいよ正念場だわ」


 雛の凛とした声が、緊迫した空気を震わせる。


「みんな、私たちの戦いはここからが本番よ。最後まで、絶対に諦めないで」


「ああ、もちろんだ。俺たちの絆は、何者にも引き裂けやしない」


 ソルの力強い言葉に、エヴァも深く頷いた。


「ソルの仲間になれて、本当に良かった...これからもずっと、一緒に戦っていきましょう」


 エヴァの瞳からは、熱い友情の光が放たれている。


 こうして、雛とエヴァ、ソルの三人は固く手を握り合った。


 幾多の苦難を乗り越えて築かれた、彼らの絆。それは、イモータルの野望を打ち砕く、最強の武器となるだろう。

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