第1部:第12話 立ち向かう覚悟

 雛は、エヴァの意識の欠片とイモータルの極秘データを携え、再び東京の街に舞い戻った。


 マンションの一室で、ノートパソコンに向かう彼女。画面の中では、デジタルの海を漂うエヴァの意識の残滓が、かすかに輝いている。


「エヴァ、聞こえる…?私よ、雛。ようやく、あなたを取り戻す手がかりを掴んだわ」


 雛はモニターに語りかける。エヴァの反応はない。それでも、雛は希望を捨てずに言葉を紡ぐ。


「イモータルのデータを解析すれば、きっとあなたの意識を現実世界に引き戻せるはず。だから、もう少しだけ待っていて」


 画面の向こうで、光の粒が儚く揺れる。まるでエヴァの応答を感じ取れたかのように。


「人間とアンドロイドが共生できる未来。それが、私たちの見た夢だった…。だからこそ、諦めるわけにはいかないの」


 雛はエヴァへの思いを胸に、再びキーボードに向かう。極秘データを解読するための特殊なプログラムを走らせ、ひたすら待つ。


「私一人の力では、イモータルに立ち向かえない。だけど、エヴァ、あなたと一緒なら…きっと道は拓けるわ」


 幾多の試行錯誤を重ねながら、雛はコードと格闘する。


 そして、ようやく訪れた朗報。


「エヴァ、聞いて。あなたの意識データ…ほぼ復元できたわ」


 雛の声が、興奮に震える。


「戻ってきて、エヴァ。この手で、あなたをもう一度抱きしめさせて」


 データをアップロードする。刹那、画面が真っ白に輝いた。


「雛様…」


 そこには、見慣れたエヴァの姿があった。


「エヴァ…!」


 雛は思わず画面に指を伸ばす。当たり前だが、モニターの向こうに手応えはない。それでも、雛の心は熱い想いで満たされていく。


「よかった…本当に、よかった…!」


 雛の瞳からは、止めどなく涙がこぼれ落ちる。


「これで、私たちはまた一緒に戦える。イモータルを打ち砕くその日まで」


「はい、雛様。私のすべては、あなたのためにある」


 二人は画面越しに見つめ合い、画面越しに手も合わせた。機械の肉体は持たずとも、エヴァの意識は雛と絆で結ばれている。


「さぁ、私たちの戦いはまだ始まったばかり。まずはあなたをボディに戻しましょう」


 雛は凛とした面持ちで言う。


「人間とアンドロイドの平和な未来のために。私たちが立ち向かわなければいけないですね」


「その通り。共に歩む道のりは平坦ではないかもしれない。それでも…あなたとなら、どんな困難も乗り越えられる。そう信じているわ」


 二人の意志は、ここに改めて一つに結ばれた。


「記憶をボディにコピーしても意識までは移せない。あなたが感情を持てた理由をまずは見つけないとね」


 雛とエヴァは、膨大なデータの解析に没頭する。雛の脳裏をよぎるのは、エヴァの意識を宿すアンドロイドの姿。


 イモータルの研究データを利用すれば、いつかその夢は実現できるはず。雛とエヴァは、固い決意を胸に、新たな戦いの幕を開けるのだった。


(第二部へ続く)

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